
プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。
歌舞伎のお話
2017.02.23『午後の散歩道』に、ようこそ!
散歩道を行き交う人々は、まだ冬の装いだが、桜並木の枝のつぼみは 毎日少しず~つ ふくらんできている。
Spring is just around the corner.
(春はもう すぐそこにいるヨ)
たくさん覚えた英語の構文のなかで、これは私がもっとも好きなものの一つだ。
さて、今月はもすぐ来る春の訪れに合わせて、どーんと華やかな『歌舞伎』の世界のお話。
『歌舞伎』かぁ。あんまり興味ナイんだけど。
とおっしゃるアナタを、めくるめく歌舞伎ワールドにお連れしましょう!
あ、といっても私は別に歌舞伎博士でもなんでもない。
全然詳しくないし、毎月観に行くほど熱烈なファンでもない。
それでも、行けばそれなりに楽しめちゃうのが、歌舞伎ワールドの素敵なところなのだ♪
1. 義経千本桜 ~川蓮法眼館(かわづれほうがんやかた)の場~
散歩道を訪れる多くの皆さん同様、私も昔は『歌舞伎』とは無縁の世界で生きてきた。
高校生の時に行った『歌舞伎教室』では、幕が上がった途端にまぶたが重くなり、思いきり眠ったあげく、幕が閉じる頃、パッチリと目が覚めた経験をもつ。
その私に、歌舞伎の面白さを教えてくれたのは、会社の元同期Hちゃんだ。
「歌舞伎なんて、私にはちょっと」と腰が引けている私に、
「大丈夫。初めてでも すんごく面白い演目があるから!」
Hちゃんが自信を持って奨めてくれたのが、この『義経千本桜 ~川蓮法眼館(かわづれほうがんやかた)の場~』である。
メインキャストは兄・源頼朝に追われ、吉野山に身を隠す義経とその恋人・静御前、義経をかくまえば頼朝に睨まれるというビミョーな立場の川連法眼。そして逃亡中の静を守る義経の家臣・佐藤忠信。
この忠信が頼朝側のスパイなのでは、と義経は密かに疑いを抱く。
これを聞いた静は、そういえば忠信は突然姿を消すこともあるが、なぜか静が天皇から賜った鼓(つづみ)を叩くと、姿をあらわすことに気づく。
義経の前で、静が鼓を叩いてみせると、案の定、どこからともなく忠信が現れる。
「いったいお前は誰なんだ~!?」
静が懐中の刀を抜き、忠信にせまると……。
と、ここから先はネタバレにつき語れないが、イヤ、ネタバレでも面白さを伝えるために言ってしまうと。
忠信は静が打つ鼓、その鼓を作るために狩られたキツネの子どもなのであった。
「ハァ!? ナニその話!?」
って思うでしょ? そう! 歌舞伎には、こんな奇想天外な話がたくさんあるのだ。
本性を現したキツネ忠信とその仲間である大勢のキツネたちは、義経に襲い掛かる追っ手を次々とやっつける。
その褒美として義経と静から与えられた親キツネの鼓を愛しそうに胸に抱き、キツネは歌舞伎のお囃子と共にコーンコン!と舞台の宙を舞い、幕が下りる、という趣向。
私が観たのは、ジャニーズの堂本光一が宙乗りで飛び回るはるか昔。
今の市川猿爺がまだバリバリの三代目 市川猿之助の頃で、小太りなオジサンが、実に切なく可愛らしく、親孝行な子ギツネになりきっていたことに心底驚き、キツネの姿で宙を飛ぶ姿に、胸躍らせたものである。
それ以来、歌舞伎に魅せられた私は、何度も舞台に足を運んだ。
歌舞伎座というと、なんだかハイソなイメージだけど、3階のB席なら4,000円。一幕だけ観る「幕見」席は、500円(保証金1,000円)から用意されている。
お江戸の人々が楽しんだ時代から、歌舞伎はずっと庶民の娯楽なのである。
2. 勧進帳(かんじんちょう)
歌舞伎を知らない人でも、この演目は聞いたことがあるに違いない。
『勧進帳』は歌舞伎十八番の一。最も有名な演目のトップバッター的お芝居だ。
初演は江戸時代の天保11年(1840年)というから、170年以上もの間、人々から愛され、演じ続けられている、歴史ある作品である。
メインキャストといえば、これも頼朝から追われて奥州(現在の岩手県) へ逃げる源義経と、彼を命懸けで守る僧兵・武蔵坊 弁慶(むさしぼう べんけい)。日本人って本当に昔から、悲劇のイケメンヒーローが大好きなんだなぁ。 そして逃避行中に辿り着いた関所の責任者 (関守) ・富樫左衛門(とがし さえもん)。
この関所を通過するために、義経と家来一行は 山伏 (山で修業する僧侶) に扮する。
僧兵だった弁慶は山伏のリーダー役。 華奢で美しい義経は目立たぬように、一番下っ端の山伏に化けている。
しかし、彼らが関所に着いた時、すでに関守・富樫は、山伏作戦の情報を握っていた。
ここで捕まれば、義経は謀反(むほん)の罪を着せられて殺されてしまう。
一方、彼らを逃してしまったら、富樫は幕府から責任を追及される。
逃げる義経と弁慶一行 vs 関所を守る富樫と家来!
さぁ、どうする。いったいどうなるんだ!?と、手に汗を握る緊迫の舞台。
みどころは、敬愛する主・義経を守るために、弁慶が 山伏であることを証明する『勧進帳』を読み上げ、一世一代の大芝居を打つ場面。
富樫は1人の男として弁慶の心意気に感銘を受け、我が身の危険を顧みず、礼節をもって彼らを逃す決断を下す。
この歌舞伎のテッパン芝居『勧進帳』、私が過去に何度か観たなかで、一番豪華なキャストだったのは、4年前、歌舞伎座がリニューアルした際、杮(こけら)落しとして演じられた舞台だ。
その時の弁慶は松本幸四郎 (紫綬褒章)。富樫は尾上菊五郎 (人間国宝)。義経は中村梅玉(ばいぎょく・紫綬褒章)。そして弁慶の一行となる、その他大勢の家来たちは、市川染五郎、尾上松禄(しょうろく)、中村勘九郎という、全員主役級のトップスターが、この演目のチョイ役を、精魂込めて務めたのである。
元々、この芝居は市川宗家 (市川団十郎の家) のお家芸として発展したものだが、十二代目の団十郎は、歌舞伎座リニューアルの年に亡くなっている。
彼がもし存命であれば、当然、主役の弁慶は団十郎が務めたに違いない。
そんな状況のなかで、大舞台を背負った幸四郎の弁慶は、気迫あふれる素晴らしさだったけれど、でも。 観たかったなぁ、団十郎の飛び六方(弁慶が花道で見せる独特のステップ。超カッコイイのよ、コレが)!
3. スゴイことになっている、新作歌舞伎
歌舞伎というと、昔ながらの隈取りメイクと意味不明なセリフ。という印象が強いけれど、今の歌舞伎界は、結構スゴイことになっている。
三谷幸喜や宮藤官九郎、野田秀樹など、今の日本を代表する脚本家や劇作家が、次々と新作歌舞伎を書いているのだ。
それも、「歌舞伎っぽい題材」を今風に書いたのではなく、思いっきり書きたいように書いたに違いない作品ばかり。
昨年公演の、宮藤官九郎作『大江戸りびんぐでっど』は、江戸時代に現れた「ぞんび」が、人間の代わりに派遣社員として働く、というハチャメチャなストーリー。
市川猿之助は大人気漫画『ONE PIECE』をそのまんまスーパー歌舞伎に仕立て、ビローンと伸びるルフィの手を、笑っちゃうような歌舞伎の手法で 見事に表現した。
中村獅童はベストセラー絵本『あらしのよるに』を新作歌舞伎にし、話題となった。
食べる側のオオカミ・がぶ(獅童)と、食べられる側のヤギ・めい(尾上松也) が、あらしの夜に偶然出会い 友情をはぐくむ、ハートウォーミングな作品。
オオカミのボス・ぎろは、先日離婚を発表しちゃった売れっ子役者の香川照之、歌舞伎名 市川中車(ちゅうしゃ)が迫力満点に演じた。
この舞台は一昨年、京都の南座限定で上演されたものが、好評のため去年12月、東京の歌舞伎座で再演となった。
現在 英語修業中につき、残念ながら未見なのだが、こういう歌舞伎を、託児所付きの舞台で上演したら、大人も子供も一緒になって楽しめるだろうなァ、と思う。
もしもそんな企画が実現したら、あなたも是非、キッズを連れて楽しんできて下さい。
歌舞伎ってホント、奇想天外で華々しくて、最高のエンターテイメントなんです♪
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