
プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。
私の隣りの 日本代表
2015.12.01『午後の散歩道』に、ようこそ!
とうとう12月に突入しちゃいましたねぇ。
商店街から流れてくるヴェートーベンの『 第九 』。 あの威勢のいい合唱が「アンタの1年、どうだった?」と問いかけてくる気がしませんか?
こんなに頑張ってるのに、たいして進歩してないなぁ、私の英語…。
でもまぁ、仕方ない。時間はかかるけれど、目指しちゃったからには、マイペースで歩み続けよう。
ん? 歩み? 歩む? 五郎丸??
「なんなのよ、その見えすいたフリは~!?」とすかさずツッコミを入れてくるビタママ編集部・Y子。 ありがとう!それじゃ、進めさせていただきます。
今回のテーマはズバリ、ラグビー!!
あなたはご覧になりましたか? 今年のラグビーワールドカップ!
屈強なオトコ達のぶつかり合い。 予選リーグで3勝をあげた日本代表に、ルールも試合方法も全然わからないけど、グッときた! というオトナ女子が続出した。
英語修業でスランプに陥っていた私も、初戦の南ア戦の最後に、同点を狙わず、トライで勝利する選択をした彼らに、挑戦する勇気をもらったのである。
《ラグビー ミニ解説》~散歩道編~
さてテーマに入る前に、ここでちょっとだけ ラグビーのミニ解説♪
ラグビーは1チーム 15名で戦うスポーツだ。
チーム編成は、1番~8番までがスクラムを組んで相手とぶつかるフォワード(FW)。9番はチームの真ん中でボールを繋ぐスクラムハーフ(SH)で、10~15番はゴールめがけて突っ走る走り屋、という編成。
試合は 前半40分、後半40分。その間、何の防具も付けずに楕円形のボールを奪い合い、身体をぶつけ合い、ゴールラインめがけて突っ走る、超ワイルドな競技なのである。
私の隣りの日本代表
お気楽 散歩道の住人がラグビーの解説なんて…。どうせウィキペディアをコピペしたんでしょ?? などと思われる方もいらっしゃるだろうが、それは違う。
何を隠そう、私は数十年間の長きにわたり、社会人ラグビーを応援してきた人間なのである。
それというのも、私が長年、出たり入ったりしつつお世話になった酒類メーカーには、トップ選手を多数抱えるラグビーチームがあったからである。
今はチームマネージメントがきちっと確立されていて、日本代表になるような一流選手は会社とプロ契約を結んでいるのだが、昔はどの選手も一般社員と同じ部署に配属された、めちゃめちゃマッチョなサラリーマンであった。
というわけで、私の元同僚には、ラグビー界で名を馳せた一流アスリートがゴロゴロいたのである。
1. 35歳、Y
「Yッサン」という愛称で同僚達から親しまれたY選手は、かつて「W大の三羽ガラス」と呼ばれた、日本代表の花形選手。 そのYッサンがある日、私の隣りの席で溜め息をついた。
「どうしたの、Yッサン。 飲み過ぎ?」
「違うよ。 あ~、ヤダなぁ。 カーワンと競るの~」
カーワンとは、今も昔も世界一強いニュージーランドのラグビーチーム『オール・ブラックス』のなかでもピカイチで有名なジョン・カーワン選手( 通称JK )のことである。 Yッサンはその週、オールブラックスとの親善マッチで、カーワンと同じポジション(右のウイング)として先発出場することになったいた。
「だってさ、カーワンって身長が190センチもあるのに、100m 11秒で走っちゃうんだよぉ」
「キャー、まるで走るバズーカ!」
「オレなんか、カーワンにぶっ飛ばされるのがオチだわ」
「ヒー。怖~い! 怪我だけはしないでネ」
その週の日曜、Yッサンは予言通りカーワンの爆走にぶっ飛ばされていた。
そんなふうに、日本ラグビーの世界との差を身体で見せてくれたYッサンは、数年後、全国社会人大会の決勝戦で奇跡のトライを果たし、エキサイトした実況中継のアナウンサーから「35歳、Y! 35歳、Y!」と連呼され、中年の星として日本全国に名を馳せたのだった。
2. ラグビー界の至宝、Sちゃん
生まれ持った身体能力と類いまれなセンスで、その昔「ラグビー界の至宝」と謳われたSちゃんは、日本代表としてワールドカップ代表にも選出された名選手。私は彼の現役時代の数年間、同じ部署の一員として声援を送ってきた。
そのSちゃんが、選手生活引退後、出世して新任課長となり、再び同じ職場で働くことになった。
「まだ走れたのに、なんでアッサリ引退しちゃったの?」
上司となっても昔の付き合いから、気軽に質問してみると、
「だってオレ、疲れるの嫌いなんだもん。あと汚れるのも」
「なんじゃそりゃ!?」
Sちゃんは呆れる私を見てもどこ吹く風。
酒類拡売のため、夜の街へ出れば、
「ボクは明日からスイミングクラブに通います。 キミの瞳に溺れそうだから」
と、華麗なトークで お得意先のママさん達のハートを鷲づかみしてしまうのである。
往年の名選手を集めたラグビーの親善試合があった時も、
「Sちゃんも出ればよかったのに」 と私が訴えると、
「走れるワケないだろ。 このカラダを見ろ~!」
Sちゃんは、皇帝ペンギンのように お腹を付き出し、ラグビー時代からキッパリ別れを告げた潔い生き様を、私に見せるのだった。
3.ユーミンの『ノーサイド』のモデル
オトナ女子なら知っているユーミンの名曲『ノーサイド』は、ある年の全国高校ラグビー決勝戦から生まれたナンバー。
彼は目を閉じて枯れた芝生の匂い 深く吸った
長いリーグ戦 しめくくるキックは ゴールをそれた
戦う少年達の あの切ない歌詞に、ウルッ!と心を奪われた女子は私を含め、数多くいたものだ。
その歌詞のもとになった試合の相手側のチームで、「彼」が蹴った球の行方をみつめていたのが、当時高校生だった私の元同僚、Kクンだった。
その試合は、ラグビーファンのオジサマ達なら飲みながら一晩中語り合えちゃうほどドラマチックな展開であった
彼がゴールキックを蹴るきっかけは、相手チームのKクンのミスから生まれた。
試合は競り合いで、たとえキックが成功しても、同点で双方のチームが優勝となったのだが、Kクンにとって、それは「負け」を意味するものだ。
「あの時はオレ本当に、頭が真っ白になったよ」
結局、キックしたボールはゴールを外し、Kクンのチームが優勝した。
「でも素直には喜べなかった。 今も思い出すとホロ苦い気分になるよ」
Kクンは最終的には日本代表に届かなかったけれど、五郎丸選手と同じ15番(フルバック) の選手として、人々の記憶に残るプレイヤーだった。
ところで、曲名の「ノーサイド」とは、試合終了を意味するラグビー用語。
身体を激しくぶつけ合い、ボールを奪い合っても、試合が終われば敵も味方も、どっちのサイドも無くなる、ノーサイド。 ラグビーとは、激しいなかに、そうした清々しい精神がこもったスポーツなのである。 素敵でしょう?
ラグビー人気は、この『ノーサイド』が流行った年を含め、何度か小さな山があったものの、基本的にはずーっと地味な、オジサマ好みのマイナーなスポーツだった。
それが今やビストロSMAPに呼ばれる程の話題を集めるなんて!
ワールドカップで、日本代表が 優勝候補の南アフリカに勝った後、現地のラグビーファンは、口々に日本のプレイスタイルを讃えていた。
体格の劣った者が、大きな相手を倒す不屈の精神力と努力。
その一戦は、もっとも感動的だった試合に贈られる「ベスト・オブ・マッチ」に選ばれた。
意味も分からず「受験 必勝」のハチマキをして「JAPAN is the best!!」とインタビューに答えるイングランドの人々を見ながら、散歩道の住人は、ひっそりと嬉し涙を流したのである。
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