
プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。
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2015.02.01『午後の散歩道』に、ようこそ!
午後の散歩道? 暢気に散歩なんてしてたら、凍死するわよ(>_<)
本当に。この散歩道を歩いてるのは、犬を散歩させている着膨れした飼い主ばかり。 え?そういうアナタは寒くないのかって? フフフ。私は今、散歩道を見渡せる暖かい部屋でこれを書いているのだ。
ということで、今回は散歩道から 暖房の効いたあったかーい室内で楽しむ旧作映画をお届けしよう。
テーマはそう、バレンタインデーにちなんで、タイトルに「恋」がつく作品を用意してみた。
小さな恋のメロディ 1971年 ヘラルド映画
このタイトルを見て、ビージーズの名曲「メロディ・フェア」を口ずさんだ方は、私と同じ年季の入ったオトナ世代の女子とみた。 この映画は70年代に日本中の女の子が憧れた、幼い恋のバイブルなのである。
ロンドンの保守的なパブリックスクールに通う11才のダニエル(マーク・レスター)は、過保護な両親に育てられた内気な男の子。 貧しい家庭で逞しく生きる悪友トム(ジャック・ワイルド)にイタズラやサボリの指南を受けながら、ヘタレ男子からの脱皮を志している。
そんなダニエルが、ある日バレエ室でレッスンをするメロディ(トレーシー・ハイド)をひと目見て、恋の歌のイントロが響きだす……。
金髪の巻き毛に青い瞳のダニエルが、バレエを習う栗色の髪のメロディをみつめるこのシーンで、ジャパニーズガールズの目は、ハート型に潤んでしまった。 そうして雨の西洋墓地で肩を寄せ合う幼い恋人達の姿を見て、ハァ〜♡、と溜め息をついたのである。
彼らが着ている学校の制服(男子はネクタイにブレザー、女子はギンガムチェックの色違いのワンピースにジャケット)にも、強い憧れを抱いた。今の日本の制服文化の原点といっても過言ではないだろう。
物語はやがて、二人の恋をめぐって大人達との対立に繋がっていくのだが、ハート目の日本女子にとっては、そんなこと「どーでもいい!」ことだった。
天使がそのまま男の子に化身したようなダニエルと、ちょっとおませなメロディが、みつめ合ったり手を繋いだり、そんなイチャイチャシーンを見るだけで、ストーリーがどうなろうと まるで興味がなかったのである。
あれから数十年の時が流れ、おつりが来るほどオトナになった今、改めて見てみると、この映画の製作者側が何を伝えたかったのかがわかり、なんともいえずホッコリした気分になる。
キリスト教の授業の前に教師が「ユダヤ人は別の教室で自習しなさい」などというセリフがあったりして、リアルな社会描写にドキッとさせられる場面もあるのだが、彼らがこの作品で伝えたかったのは、大人が子ども達へ送る 未来への優しいエールだ。
その優しさは、ビージーズを始めとする(当時の)ニューエイジ・ミュージシャン達の歌詞に込められている。 映画の冒頭に流れる『イン・ザ・モーニング』は、明け方に目覚める少年の心を、ささやくような声で
「水溜りは昨夜の寒さに凍ってる。これが僕の人生の朝だ」と歌う。
子ども達の朝の風景に、この歌詞の字幕が重なった時、彼らの伸びやかな成長を願う 大人達の優しさが伝わってきて、ジワーっと胸が熱くなった。
当時の日本で空前の大ヒットとなったこの映画、実は本国のイギリスやアメリカでは、まるでヒットしなかったそうだ。主役の美少年マーク・レスターは、その後もヒットに恵まれず、28才で俳優を辞めて、現在はロンドンの片隅で整骨院を開いているという。 数年前、マイケル・ジャクソンの子どもが彼の実子であると判明し、話題に上ったことも記憶に新しい。
初恋のきた道 1999年 中国映画
少女に恋した美しい少年の映画から、今度は先生に恋した美少女の物語を取り上げてみよう。
監督は北京オリンピックの総合演出を手掛けた中国の巨匠チャン・イーモウ。主役の娘は本作で女優デビューを果たしたチャン・ツィイーが演じている。
物語は、都会で働く青年ユーシェンが、父親の訃報を受けて故郷の寒村へ帰ってくるモノクロのシーンから始まる。 父親のチャンユーは町からこの村に教師として赴任し、長年 村の子ども達を教育してきた人物だ。彼は村で生まれ育った美しい娘ディと恋をし、結ばれた。
両親から聞いた二人の恋の物語を回想する場面。ここから映像はカラーになり、中国の辺境地の、広大な大地と自然の色彩を鮮やかに映し出す。
町から村へ続く一本道を、馬車に乗ってやってきた新任教師チャンユーに、貧しく純朴な村娘ディが一目惚れするところから恋のスタートとなるのだが……。
赤い綿入れの服に、真っ黒のおさげ髪を緑の毛糸で結んだディの 輝くような可憐さ比べ、町の青年チャンユーは、90年代の刈上げ頭みたいな髪型をした、貧相な外見をしている。 スクリーンで観た時は「え!? これ?」と思わず声を上げたくなったほど冴えない風貌なのである。
こんなに綺麗な娘が、なぜあんな男を?
シーズンスポーツのインストラクターが、やたらカッコ良く見えちゃう あの心理状態が、この娘にも作用しているのだろうか。
しかし巨匠チャン・イーモウは観客の思惑をスルーし、ディの溢れるような恋心を、可愛らしくいじらしく画面いっぱいに描いていく。
物語は、時代を経て一本道から故郷の村へと戻ってくるチャンユーの亡骸を映し、観客の涙を誘う。私達はいつのまにか、冴えない町の男チャンユーに敬愛の気持ちを抱いていることに気づかされる。
(あ〜、やられた やられた)
と涙を拭きながら、チャン・ツィイーの愛くるしさとチャン監督の手腕に、気持ち良くハマってしまう映画なのである。
箱入り息子の恋 2013年 キノフィルムズ
さて最後の1本は一昨年公開の日本映画。
知っている方は「なんでコレを選ぶ?」と呆れているかもしれない。
「恋」がつく映画なんて無数にあるのに、わざわざキモイ男の恋愛映画をもってくるなんて! ええその通り。確かに星野源演じるこの作品の主人公は、世間一般に「キモイ」と言われる特徴を備えている。 全体的にヌメっとした印象の外見に、メガネの奥の細い目は何を考えているかわからない不穏な無表情。 道ですれ違ったら、無意識に距離を取りたくなるような人物である。 しかしストーリーを追ううちに、観客はそのキモイ男の不器用で一途な恋を、心の底から応援したくなってくるのだ。
この心の変化は、不気味な未確認生命体E.T.に悲鳴を上げた女の子(後のドリュー・バリモア)が、ラストには「行かないで!」と涙ながらに別れを惜しんだ あの感覚と同じかもしれない。
天雫(あまのしずく)健太郎は、生まれてこのかた一度も彼女が出来たことのない35才の独身男。 人付き合いが苦手な市役所の職員で、実家に暮らし、水槽に住むペットのカエルだけが唯一の友達だ。 そんな健太郎の将来を案じた両親は、子供に代わって結婚相手を探す「代理見合い」の会場へと足を運ぶ。 彼らはそこで一組の両親と知り合うが、美しい一人娘・奈緒子(夏帆)は目が不自由であることを聞かされて……。
物語は、恋愛音痴の健太郎と目が不自由な奈緒子との、実にシンプルなラブストーリーだ。 しかし、アングラ系劇団・大人計画で修業を積んだ星野源の気持ち悪さと、「天然コケッコー」で爽やかな演技を見せた夏帆の清らかな美しさが、他の恋愛映画とは一線を画している。
主役を演じた星野源は、「ボクは不器用な男の恋を一生懸命演じ、その結果、キモチワルイ奴、と言われてもいいと思った」と語っているが、出来上がった作品を見た時、本当にキモイ男になっていて驚いたそうだ。
両方の親から奈緒子と会うことを禁じられた健太郎は、役所を抜け出し、奈緒子のもとへと走る。 彼女への溢れる愛を抱きながら、夕暮れの道を爆走する健太郎の一途さは、キモさも滑稽さも超えて、私達の胸を熱くする。
一人の人間から こんなふうに愛されたら、幸せだろうな、と思わせてくれる作品なのである。
余談だが、この映画の監督・市井昌秀はお笑い芸人出身で、「ルネッサーンス!」の髭男爵の元メンバー。 随所に見せるキレの良い小ネタやセリフの面白さも見どころの一つだ。
以上、寒い日にあったかい部屋で見る「恋」の映画3本。
見れば心がホンワカして、ちょっとだけ春が近づいた気持ちになれるのではないだろうか。
ロードショーの情報は
「イチオシMovie・もっとシネマコンプレックス」を参考にして下さい♪
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