
プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。
2014年スポーツ名場面
2014.12.15『午後の散歩道』に、ようこそ!
2014年も残すところ あとわずか。 商店街から流れるベートーベンの第九が、風に乗って この散歩道にも聞こえてくる季節だ。
晴れたる青空 ただよう雲よ 小鳥は歌えり 林に森に♪
そう! 寒くて忙しい毎日でも、クリスマスの次の日には角松が飾られ、日本の新しい1年は ちゃんと始まることになっているのだ。
散歩道を訪れた皆さんにも爽やかな1年が迎えられるよう、2014年をスポーツの名場面で振り返ってみたい。
以前のエッセイで、映画・演劇鑑賞が趣味であることはお伝えした通りだが、私はスポーツ観戦も大好きだ。 映画・演劇が台本のあるドラマなら、スポーツは台本のない人間ドラマ。 優れた能力の持ち主が、試合という舞台の上に上がり、磨き上げた技を表現する。 観客は彼らの技に魅せられ、勝てば選手達から歓喜と勇気をもらい、負ければ勝負の厳しさを教えられる。
そのワクワクとシビレるような緊張が、スポーツ観戦の魅力だ。
錦織圭の躍進
記憶に新しいスポーツの名場面といえば、プロテニスプレイヤー錦織圭の躍進だ。 世界四大タイトルの一つ、全米オープンで準優勝した時には、テニスフリークじゃない私も、テレビにかじりついて応援したものだ。 といっても、経済的な理由で
WOWOWを入れてない私は、世界ランク1位の王者ジョコビッチを撃破した黄金の準決勝は見られず、決勝戦でチリッチにストレート負けした試合だけを見たのだが…(泣)
仕事仲間のT君は、かつてテニスの神童と言われた男で、元プロテニスプレイヤー松岡修造が将来有望な子ども達を育成するプログラム『修造チャレンジ』に参加した経験があるそうだ。 当時中学生だったT君と共に、松岡氏の熱血指導を受けたのは、まだ小学生の錦織少年だったという。
「えーっ! すごい凄い。 錦織君って、どんな子だったの!?」
「喋ると普通の、おとなしい子でしたよ。 でも、あの頃から手首の柔らかさとボールへの反応は 群を抜いてましたね」
ミーハー気分全開の私の質問に やや面倒臭そうに答えてくれたT君は、大学卒業と同時に競技生活にピリオドを打ち、今は企業を担う若手社員として、仕事にまい進している。
一方、小学生で全国三冠を達成した錦織圭は、13才で米国へテニス留学し17才でプロに転向。18才でツアー初優勝を果たし、世界の舞台で今日までの躍進を遂げている。
そんなT君と錦織選手は、取り巻く環境が変わった今も、家族ぐるみで食事をする間柄だそうだ。 なんだか微笑ましい話。 きっと二人とも 親孝行息子なんだろうな、と私は思う。
全米オープンで準優勝を果たした錦織は、世界ランキング5位となり、日本人として初めてツアーファイナルに出場した。 オープニングで、ショーアップされた会場に現れた錦織は、ツアーを勝ち抜いた8人の選手の中でもひときわ小柄で、子どものように幼く見えた。 しかし試合をすれば、パワーに勝る欧米の強豪選手を相手に 予選リーグを勝ち進み、ベスト4入りを果たす。 技術的なことなど解らない私のような素人でも、彼の素早いフットワークや しなやかで鋭いストローク(AIR K!)は 見るだけで楽しい。
打つたびに「ウォーッ」「ウェーイ」と声を上げるガタイの大きな欧米選手の球を無言で打ち返し、着々とコート際に追い詰めてゲームをものにする錦織選手を、私は今後も応援していこうと思う。 試合会場では「クワイエット プリーズ」と注意されてしまうから、テレビの前でキャーキャーと♪
FIFAワールドカップ
アギーレ新監督の八百長問題に揺れている現在のサッカー界。 ブラジルのワールドカップからたった半年で、いろんなことが起こるものである。
半年前の日本代表は、予選リーグを1試合も勝てないまま敗退し、決勝トーナメントには進むだろうと期待していたすべての日本人と共に、失意に沈んでいた。 長友佑都の男泣きの会見にもらい泣きしたのは、ついこの間のことだ。
ザックは今、どうしているのかなぁ。 まるで知人の心配をするように、あの優しげな風貌のイタリア人を思う私である。 それというのも、かつて私は偶然にも、彼を始めとするザックJAPANの主要選手を 至近距離で見たことがあるからだ。
それは2010年の秋のこと。
ベスト16入りを果たしたW杯・南アフリカ大会から、次のW杯へ向けて船出したアルベルト・ザッケローニ氏率いるザックJAPANの最初の試合、横浜国際競技場(日産スタジアム)で行なわれたパラグアイとの国際親善試合の前日のことである。
日本代表チームは試合の数日前から横浜入りし、練習、および戦術に関するミーティングを重ねていた。 ミーティング会場は、横浜市内の某ホテルで行われたのだが、その会場の隣りの部屋は、私が勤める会社の、お得意先を対象としたセミナー会場だったのである。
むろんホテル側の配慮に手抜かりはなく、日本代表チームのミーティングは午前中で終了し、我社のセミナー開始は午後2時からのスタート。セミナーのお客様がザックJAPANの選手達とバッティングすることはなかった。
セミナーの設営で午前中から準備をした我々社員のみが、ミーティングの合間にフロアロビーでくつろぐ新任監督ザッケローニ氏、そして日本代表の面々の素顔を間近で目撃する幸運を得たのである。
そう、私は見た。会場からスマホ片手に親しい誰かと会話しながら歩く金髪の本田圭佑を。 松井大輔と並んで歩く川島永嗣を。 当時まだ代表だった中沢祐二の派手な髪型と白い歯を。 ザックはちっちゃなガラケーをいじりながらロビーをうろうろと歩いていた。 ジャージの上下を着た丸顔のイタリア人は、スーパーマリオを連想させる親しみやすさが印象的だ。
ロビーで同年代の若い選手とハイタッチし、長椅子に寝そべってキャッキャとはしゃぐ少年のような選手もいた。
「あ。 香川だ!」
その少年みたいな選手を見て、仕事仲間のまーくんが囁いた。 サッカーは日本代表戦しか見ないミーハーファンの私と違い、まーくんは高校時代 国体にも選出された元サッカー選手で、日本代表選手にも詳しかった。
「今度、ドルトムントに行くんだけど……ヤツはいい!」
「へぇー。 そうなんだ。 イタズラ坊主にしか見えないなぁ」
その時の香川は日本代表初選出で、サッカーファンなら誰もが知る逸材ながら、一般的な知名度はまだ低かったのだ。 (ちなみに香川とはしゃいでいた若手選手は、現在 浦和レッズ所属の槙野智章選手だった)
セミナー準備の手を止めて、私達は、ミーティング会場へと入っていく選手達を見送った。 一番勇気のあるおじさん社員Hさんが
「本田さん、本田さん! 応援してますよぉ」と声をかけると、本田選手は
「あ。どうも」と頷いた。
翌日の試合で香川慎司が日本代表初ゴールを決めた時、私は茶の間でその勇姿を見た。
「きゃーっ。 あの子だぁぁ!!!」
彼が世界から注目を浴びる選手となった今も、私の脳裏には槙野とはしゃぐ少年の姿がしっかり焼きついて離れないのである。
リオのW杯で、香川は思うような活躍ができず、曇った表情でインタビューに答えていた。 ザックは「敗戦の責任は私にある」という言葉を残し、日本を去った。 言い訳も自己弁護もしないその潔い敗戦の将の姿は、私の目には誰よりも日本人らしい、侍のような男に映ったのだった。
ワールドカップは決勝トーナメントでも様々なドラマを生み、ドイツの優勝で幕を閉じた。 W杯ミーハーファンの私も、すでに日本が敗退している分、ハラハラしないで思う存分試合を楽しめた。 オランダ代表のベテラン、ロッペンの獣のような爆走ぶりや、ブラジルの至宝といわれたネイマールが対戦相手の空中キックで負傷したこと、決勝戦でドイツに敗れながらもMVPに輝いたアルゼンチンの天才メッシの悔しそうな横顔、そして優勝杯を手にしたドイツの守護神ノイアーの爽やかな笑顔……。
2011年東日本大震災が起きた時、当時ブンデスリーガのバイエルンに所属していた内田篤人選手が「日本の皆へ」とメッセージを書いたTシャツを着ていた事は覚えているだろうか。 あの時、チームの勝利に沸くファンやメディアに、もっとメッセージを見せろ、とウッチーをサポーターの前に連れ出したのが、チームメイトのノイアーなのである。
さぁ皆さん、それを踏まえて どうぞノイアー選手を検索してみて。 本当に爽やかなイケメンだから!
ソチオリンピックのフィギュアスケート
さて、2014年のスポーツ名場面、最後にお届けするのはソチオリンピック。
4年に一度のスポーツの祭典は、スポーツ観戦好きの私にとっても人生の一大イベントだ。 思い起こせば、開会式はフィンランドのオーロラ観測基地サーリセルカのホテルにて、旅の友Cちゃんと見たのである。 帰国後すぐに時差ボケのまま五輪観戦モードに突入した私は、寝不足と戦いながら、様々な競技に挑む日本選手を応援したものだ。
スキージャンプの葛西選手のレジェンドな銀メダルやモーグル上村愛子選手の魂こもる最後の一本。スノーボードの10代コンビ平野歩夢・平岡卓両選手の軽やかな空中の舞いや同じくスノボパラレル大回転 竹内智香姉さんの気合いの滑り……。 ここですべてを語ることなど到底できない位、たくさんの感動をもらったのである。
ということで、ここでは大好きなフィギュアスケートの話を少しだけ。
それに先立ち、競技のテレビ中継を録画した永久保存のビデオをもう一度見てみた。 あの時さんざん泣いたのに、何度見ても涙が止まらなくなるのは 浅田真央選手のフリー(FS)の演技。
前日のショートプログラム(SP)で16位に沈んだ浅田真央が、トリプルアクセルを含む6種類すべての3回転を8度決め、完璧な演技で最後まで滑りきったあのシーンは、会場の観客と テレビの前で見守る世界中の人々に感動をもたらした。
SPからFSにかけての1日の間に、「#GoMao」「#MaoFight」とタグ付けされたツイッターが世界中から寄せられたことも話題になった。
閉幕後に、海外放送局で実況されたコメントを特集するテレビ番組があった。
それはほんの5分間の短いコーナーだったが、これまた見るたびに胸がいっぱいになる実況コメントの数々なのである。
「3回転半で勝利したいのではなく、観客を魅了したい」
彼女は今日、自分の言葉を実現した。
難しいジャンプに挑み続けるのはとても険しく孤独だっただろう。
でも神様は その勤勉さと粘り強さを裏切らない。
彼女が涙を流している。 私達も涙がこぼれる。 (中国CCTV)
おお神様、彼女はもう十分よ。 なんという苦しみだったでしょう。
彼女が奮い立ったこと、偉大なスポーツマンであること、
自分に打ち勝ったということに、ただただ ありがとう。(ロシアNTV)
涙を堪えるのが大変だ。 ジャッジ達に言いたい。
いつだって彼女だけが 新たな道を切り拓いている。
8度の3回転に挑戦し、全部成功させるなんて飛び抜けている。
メダルがない彼女こそ、本物の女王だ。 (イタリア SKY SPORT)
ホラね。 読んでるだけで涙がじわーっとこみあげてきちゃうでしょ。
書いてる私だって涙ボロボロなのである。
そして そんな感動をもたらした彼女が、海外記者クラブでの会見で、
「(引退か選手続行かは) 今のところ、ハーフハーフ」
ニッコリ笑って答える天真爛漫さが、日本中の真央ちゃんファンを釘づけにする魅力であろう。
コメントと言えば、ソチで8位入賞を果たした鈴木明子選手の言葉も印象的だった。
「おおげさですけど 生きてるな、と感じました」
病気を克服し、またスケートが滑れる喜びを全身で表してきた彼女は、五輪当時28才。 若い選手が主流になりつつある競技の世界で、大人の女性の上品さと華やかさを表現し続けた。 趣味のいい衣装と選曲で、私達を毎シーズン 楽しませてくれた。 演技だけでなく、リンクを軽やかに滑る彼女の姿は、挫折を乗り越えて生きていく人間の美しさ そのものだった気がする。
ハー。本当に、真央ちゃんとアッコちゃん、そして色気と可愛らしさを併せ持つ色男・高橋大輔がいない今シーズンのフィギュア界は、なんという寂しさだろう。 が、時計の針は決して戻らず、進むのみだ。
世界王者の王子様・羽生結弦選手は、エンカン選手との衝突の怪我を押して試合に出場し、私達を驚愕させた。
棄権せず試合に出たことに関しては様々な意見が飛び交ったけれど、負傷した顎に絆創膏を貼り、ジャンプの着地を支えきれず転倒しながらも最後まで滑りきった彼の顔には、勝負に生きる人間の鬼気迫る情熱があった。
以上、2014年を彩ったスポーツの名場面。 まだまだ語り尽くせないドラマがたくさんあるが、散歩道で立ち話するのは ここまでとしておこう。
来年も、たくさんのスポーツを見て胸を熱くしながら、それぞれの人生を 気持ち良く歩んでゆきましょう。
2015年が、どなたにとっても よい年となりますように!
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