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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.66

散歩道なりに平成を振り返る ~市民から見た あのお二人~

『午後の散歩道』に、ようこそ!
ついに新元号が決まりましたねェ。 いやぁ、想像もつかなかった! ホントにソレでいっちゃうの~?

なぁんてね。……私、ウソをついてました。。
だってこれを書いている今は平成31年3月の風の強い春の土曜日。
私はいつもの散歩道から、花粉だらけになりながら帰宅したばかりなのである。

新元号が発表になるのは4月1日の月曜日。
このエッセイが更新される日、読者の皆さんと同じく、私は初めてそれを知ることになるのである。

というこで、新元号の発表と共に、平成最後の散歩道は、市民の目から見た、天皇皇后両陛下のお姿について語ってみたい。


靖国神社の菊の御紋、と満開の桜。「菊」と「桜」こそ、ザ・日本!

1.“They are cute together.”(お似合いの二人)

2016年の8月、有楽町の交差点を歩いていた私は、朝日新聞の号外を受け取った。
そこには大きく『天皇陛下 お気持ち表明』とあり、天皇陛下のお写真と、今後、象徴としての務めを果たしていくことを「案じています」という、国民に向けたメッセージが綴られていた。

その時私は英会話のレッスンに向かう途中で、号外を手にしたまま、当時の講師リンディのもとに向かった。

「私たちのエンペラーが、引退したいって言ってるよ」
リンディに号外を見せながらそう言うと、彼女は
「Oh! Does he really say?」と驚いて、日本語で書かれた新聞を見た。
「彼は自分では引退できないって、法律で決まってるんじゃないの?」
「そう。だから、するんじゃなくて、したいって表明したんだと思う」
私たちはそれから、たどたどしい英語と日本の事情に詳しくない外国人、というスタンスながら、日本の皇室について いろんなことを話し合った。
私たちが共通して思っていたことは、

“It’s about time to do so.” (そうすべき時が来たんだ) ということ、そして
“They are so cute together.” (あの2人って超お似合い)ということだ。

They (あの二人) というのはもちろん、畏れ多くも天皇皇后両陛下のこと。
女王陛下が君臨する英国出身のリンディは、かねてより日本の皇室にも注目していたらしく、テレビやネットニュースで報道されるお二人の仲睦まじい様子を、以前から”so cute”と感じていたらしい。

天皇陛下が民間出身の正田美智子さんとご成婚されたのは、陛下が皇太子でいらっしゃった1959年のこと。
美しく聡明な民間人の令嬢・美智子さんと若きプリンスが軽井沢のテニスコートで出会い、育んだ愛は、『世紀のロマンス』として日本中を沸かせた。


イギリスのロイヤルウエディングも、この熱狂ぶり!

散歩道に集うママ達よりだいぶオトナな私も、さすがにその頃はまだこの世に生まれていなかったが、皇居前の道を六頭立ての馬車に乗った皇太子ご夫妻が,沿道の市民に晴れやかに微笑み、お手を振られている映像は、何度も目にした光景である。
ちなみにこの時 流れている馬のひづめのパカッパカッという音は、馬車を曳いている本物の馬のものではなく、NHKが後付けした効果音だった、というのは有名なエピソード。

その日から60年の永きにわたり、お二人は文字通り手に手を取り、歩調を合わせ 共に日本の象徴としての道を歩んでこられたのである。
陛下が皇太子時代のある時、アフリカをご訪問された時のニュースを、私はよく覚えている。
お二人はサバンナでお車を降り、手を繋いで目をこらし、草原に生息する野生動物の姿をお探しになっていた。
「まぁ。あそこに象さん!」
美智子妃殿下が遠くの木立ちに佇む象を指差して小さく叫ぶと
「あれは親子かなぁ」
殿下は妃殿下の手を引き、お付きの人々から離れて草原の道なき道を歩いていた。
その映像を日本の茶の間で見ていた私は、
「本当に仲の良いご夫婦なんだなぁ」と、ホッコリした気持ちになったものだ。


ずっと仲良しのカップルって…so cute♡

お二人が皇太子ご夫妻として、初めて沖縄の「ひめゆりの塔」をご訪問された時、過激派の暴徒が殿下に火炎瓶を投げつける、という事件があった。
その瞬間、妃殿下は手を差し出し、殿下をお守りするしぐさをされたことは、後にニュース映像で取り上げられ、私たちの知るところとなった。

お二人はその事件があった直後も予定を変更することなく、激戦地となった慰霊塔へのご訪問を敢行された。
皇太子ご夫妻の、沖縄に寄せる思いの強さが示されたご訪問であると同時に、美智子さまが妃殿下として皇太子殿下に寄り添う覚悟のようなものも垣間見えた出来事だったと私は思う。

2.ご尊顔を拝したい!

そんな天皇皇后両陛下のご尊顔を拝したこと、アナタはありますか?
私は以前、東京の劇場へ ブロードウエイミュージカルを観に行った時、ご観覧にいらした今の皇太子徳仁親王(こうたいし なるひとしんのう)のお姿を拝したことはあるけれど、天皇ご夫妻のお顔を拝したことがない。


千代田区 二重橋から望む皇居の伏見櫓 (旧 江戸城)

「東京で皇室の方々を拝見したいなら、あれしかない!」
今年の1月2日、会社の元同期で親友のCちゃんは、平成最後の正月の一般参賀に参加した強者だ。
寒い寒い正月の朝に早起きをする根性がなかった私は、ニュース映像で15万人の人出があったということを知り、日本人は本当に皇室を愛しているのだなぁ、と心から感心してしまった。

後日、Cちゃんに「お姿、見られた?」とLINEを入れると、Cちゃんは隣りに並んでいた背の高いフランス人に「プリーズ」とお願いし、この写真を撮ってもらったという。


はるか遠くに、皇室の方々が! (背の高いフランス人撮影)

Cちゃんは友人Nちゃんと朝10時に有楽町で待ち合わせ、行列に並ぶこと5時間半。
天皇陛下のご意向で急遽もうけられた7回目のお出ましに、ようやく立ちあうことがかなったそうだ。

このように、日本にいると滅多にお会いすることのできない皇室の皆さまであるが、遠く海外で生活する日本人は、案外身近なところでお目にかかるチャンスがあるらしい。

以前、この散歩道に登場してもらったことがあるデンマークの古都オーデンセに住むM(愛称:メヘン=本人承諾済み)は、天皇皇后両陛下や、来月には天皇となられる皇太子殿下を彼の地でお迎えしたことがあるという。

2017年6月に、皇太子殿下がご訪問された際、メヘンはスッピンにTシャツ、サンダル履きで 殿下とお話を交わしている。

カジュアルなスタイルで皇太子殿下をお迎えする、我が友メヘン

園遊会で晴れ着やモーニングを着用し、両陛下の前で畏(かしこ)まる日本の名士や著名人に比べると、何という気安さであろうか。

しかし皇室の方々は、相手が正装だろうがサンダル履きであろうが、変わらぬ穏やかな笑顔で、国民に接する。そういう懐の深い気高さが、日本の皇室の方々の心に根付いているように感じる。

天皇皇后両陛下は在位期間中に22回、海外をご訪問された。
ご訪問の目的はその都度違っていても、お二人は必ずその国に在留する日本人にお会いになり、労いの言葉をおかけになった。

我が友メヘンも、20年前にお二人をお迎えした時、美智子皇后から、
「海外での生活は大変でしょう。頑張って下さいね」と、
有り難くも励ましのお言葉を頂いた。
メヘンは自分なんかより、しじゅう人々に囲まれながら笑顔でハードスケジュールを遂行されるお二人こそ、「よっぽど激務だ…」と感じたそうだ。
彼女はお二人のお姿をお見送りしながら、この小さな古い街にいらっしゃる間だけでも、解放感を味わっていただきたい、と願ったという。

天皇皇后両陛下のご公務のなかで、私の印象に強く残るのは、災害被災地へのご訪問だ。
平成の30年間、日本は戦争のない平和な世の中であったが、度重なる大地震や異常気象による災害に見舞われた時代でもある。

平成7年1月に起こった阪神・淡路大震災。
震災から12日後に、お二人は余震の続く現地の迷惑にならぬよう、最小限の同行人数で被災地を回られた。

美智子さまは出発の朝、皇居に咲いていた水仙の花を自らお摘みになり、激震のあった神戸市長田区の瓦礫の上に、その花束を捧げられた。
底冷えのする被災地の体育館で、両陛下はスリッパも履かず、床に膝をついて被災者一人一人とお言葉を交わされた。

お二人が次の被災地へ向かうためバスに乗り込んだ時、美智子さまはバスの中で、お見送りする人々に向かい、握りしめた両手を、お身体のわきで2度振った。
それが、「がんばって!」を意味する手話であることを知った時、美智子さまの国民を思う愛情に、涙があふれたものである。


水仙の花は『希望の象徴』

東日本大震災の後、東京電力が管内において計画停電を実施したことは、皆さんの記憶にも残る出来事だと思うが、皇居のある千代田区をはじめ、23区のほとんどは「国の有事対応に影響が出る」として対象外になっていた。

しかし「国民と苦労を共にしたい」とのご意向から、両陛下は「第一グループ」と同じ時間帯に、皇居内のすべての電力を停止する「自主停電」を行なわれた。
両陛下の自主停電は、東京電力が停電を終了するまで続けられたそうだが、このことは当時大きく報道されることなく、私が知ったのも、震災からずいぶんたってから。
後になって初めて、お二人のお気持ちの誠実さに触れたのであった。

さて、やんごとなき両陛下のお姿を、散歩道から拝見したさまざまなこと、いかがでしたか?

5月から、天皇陛下は上皇、皇后陛下は上皇后となられ、以後ご公務からは離れられるということだ。
お二人のお姿を、私たちが拝見する機会がなくなってしまうのは寂しい限りであるけれど、これまで国民のために心身を挺し、お尽くしくださったことに篤く感謝し、いつまでもso cuteなお二人であられることを願いつつ、平成に別れを告げようと思う。

いろいろあって大変だったけど、ありがとう平成!
またみんなで、新しい時代を作っていきましょう♪♪


本物の三種の神器と、移り変わる庶民の3点セット。さて次の時代は…?

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