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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.53

“大会11日目”の 平昌五輪!!

『午後の散歩道』に、ようこそ!
いやー、スゴかったですねェ、平昌五輪!! 感動と驚愕の2週間。 勤めに出ている平日のデイタイム以外は、テレビの前から離れることができませんでした。

…と、まるですべての競技を味わい尽くしたかのように言ってみたが、これを書いているのは、実をいうと2月19日の大会11日目。
高梨沙羅ちゃんの銅メダルに目を潤ませ、羽生結弦の金・宇野昌麿の銀にボロ泣きし、小平奈緒選手の金メダルに喝采を送り、今夜行われるスピードスケート女子 団体パシュート準々決勝の勝利を祈る、それが今の私。

まだカーリング女子が予選リーグを突破できるかも、スキージャンプ団体の結果も、フィギュア女子の新女王が誰になるのかも知らないのである。

これを読んでいる皆さんは(私自身を含め)、なぁんだ、そのあとこーんなドラマチックな展開があったのに!と、今の私を憐れんでいるに違いない。

くーっ。まるで「明日 早いから帰るネ」と、飲み会の途中で帰った翌日、
「あの後、すっごい盛り上がっちゃってさ~」と友から聞かされるのと同じ悔しさ!!!

こんな悔しい思いを胸に抱きながら、今月は世界で一番大きなスポーツのお祭り、オリンピックについて語ってみよう。


おコタに入り、家族揃って観戦する、それが冬のオリンピック♪photo by tanya7leigh

1.鋼(はがね)の王者

まずどうしても語らずにはいられないのはファギュア男子シングルで五輪連覇を果たした真の王者・羽生結弦。

ソチ五輪で金メダルを獲ったあと、羽生選手を幾度となく襲ったのは、選手生命を脅かすほどのアクシデントだ。
試合中の衝突事故や手術、足首の捻挫、二度の靭帯損傷…。

「エェーッ! 今度はナニ!?」
世界をまたにかけるユヅリスト(羽生選手の追っかけファン)だけでなく、お茶の間ユヅファンの私やCちゃんも、アクシデントがあるたびに毎回 胸を痛めていたのである。

しかしそんななかでも、彼は「自分は絶対王者なんだと信じて、勝ちにいくだけ」と強気の発言を続け、伝説の陰陽師「安倍晴明」の狩衣をイメージした衣装をまとって、世界最高得点を叩き出した。

五輪シーズンの幕開けとなった昨年のNHK杯の公開練習中、彼は大技4回転ルッツの着地に失敗し、右足首の靭帯損傷という大怪我を負った。

4回転ルッツは、若手のホープ・ネイサン チェンが得意とするジャンプで、羽生が彼に勝つためには、どうしても必要、と考えられていた技である。

氷の上にグニャッと転倒した あのショッキングな映像を見たとき、私などは、
神様が「そこまでにしておけ」と言っているのではないか、とまで思ったものだが、鋼(はがね)の心を持った王者は、くじけなかった。

「大きな事言うなって言われるけど、言います。勝ちます」
試合直前に平昌入りした羽生選手は、報道陣を前に、紙のように白い顔をしてそう答えていた。

彼がその言葉のまま、ショートプログラムで世界に王者復活を示した後、基礎点では彼を上回る演技構成で臨んだネイサン・チェンはすべてのジャンプを失敗し、17位に沈んだ。

チェンは翌日のフリープログラムで完璧な演技をしたものの、総合得点で4位となり、メダルには手が届かなかった。
ちなみに これを見て、浅田真央選手のソチ五輪を思い出した、という人がいるけれど、まだ10代のチェンと、選手人生の集大成として臨んだ真央ちゃんとでは重さの点で 「まるで違う」と私は言っておきたい。


今やカーリングもすっかり冬の人気スポーツ photo by Don Voaklander on Visualhunt

話をユヅに戻そう。
大怪我をした羽生結弦が氷の上に乗ったのは試合のひと月前。4回転が飛べたのは試合のたった2週間前。そんな選手がいきなりオリンピックに出て金メダルを獲るなんて、常識では考えられない。

フリープログラム演技前の6分間練習で、羽生選手がジャンパーを脱ぎ、あの『SEIMEI』の衣装を見せた時、背中に金糸で縫い付けられた『五芒星(ごぼうせい)』(陰陽師の守護の印)に向かい、私とCちゃんは、「どうかお願い、ユヅを守って!!!」と両手を合わせた。本当に、フィギュアファンじゃない日本中の人達も、あの時 同じように祈ったんじゃないかと思う。

日本の大方の女子がボロ泣きしたと思われる あの素晴らしい演技のあと、金メダルが決まった羽生選手は、ウェイティングスペースで目を細~くして笑いながら、ポロポロ涙を流していた。

辛かったんだろうなぁ。 怖かったんだろうなぁ。

そんなことは分かり切ってる、当然だ。と思いながらも、私は、姉さんのような、母さんのような、叔母さんのような気持ちで、あの強い男の子の涙にもらい泣きした。日本の大方の女子、プラス織田信成と一緒に。


デンジャラス競技No.1はスケルトン(ガイコツ)という名のそりレース! photo by KOREA.NET

2.天然王子・宇野昌麿

そんな鋼の王者の横にひっそりと並び、王者にイジラレ可愛がられていたのが、銀メダリストの宇野昌麿。
今回の五輪でライバル達が王者・羽生の絶対的強さの前に次々と沈んでいくなか、たった1人落ち着いた本来の演技をして、銀メダルをつかみ取ったのは、皆様もご存知、五輪名場面の一つである。

がしかし、メンタルと技の素晴らしさだけでなく、今、話題となっているのは、彼の人並み外れた天然っぷりである。

私が宇野昌麿を初めて見たのは、彼が全日本ノービス選手権(ジュニアの一つ下、小学生クラス)で優勝し、その年の全日本選手権のエキシビションで「将来有望なキッズスケーター」のコーナーに出演したときだ。

「わ!ナニこの子!」

フリフリの衣装につぶらな瞳、7才児としか思えない体つきで 大人顔負けにクルクルと3回転ジャンプを決める姿に、お茶の間のみならず、会場中の観客がどよめいた。
演技を終えた昌麿少年を ニコニコ顔で待っていたのは、伊藤みどりや幼少期の浅田真央、村上香菜子選手を育てた 山田真知子コーチである。

「う~む、スゴイ子が出てきたわ~」
私のみならず、フィギュアファンは皆、新しい才能をみつけると、その子の選手としての成長を長い年月、見守ってゆきたくなるものなのだ。

まだほんの子供だけど、成長したらかなりのイケメンになる!
そう信じて早10年近い年月がたった。

その間、指導は山田コーチから樋口美穂子コーチへと託され、宇野昌麿は 世界の舞台で活躍するスケーターへと成長を遂げた。

厳しくも優しい女性コーチ陣が、手塩にかけて育てた男子、それが宇野昌麿。
プレッシャーがかかる大舞台で、表現力あふれる力強い演技をし、リンクサイドで待つ樋口コーチの腕のなかに、ためらいもなく飛び込んでゆく、それが宇野昌麿。

こんな日本人男子アスリートが、他にいただろうか。
いや、いない。

2015年のグランプリファイナルで、初めて表彰台に乗ったときのこと。
優勝した羽生選手が、どうしてよいやら戸惑う宇野選手に、
「並んで肩に手を回すんだよ」と腕を差し出すと、彼は恋人のように、その腕に自分の腕を差し入れ、
「おい!結婚式じゃないんだから!」と、王者 羽生に突っ込まれていた。

おせっかいなTV番組が 野菜嫌いの宇野選手に、味にひと工夫を加えたボルシチを提供すると、それを一口食べた彼は、「嫌いな野菜がいっぱい入っていて、おいしいです」とコメントした。

美容院の椅子に座ると いつも熟睡してしまうので、今の自分の頭にパーマがかかっているのかもわからない宇野昌麿。


今回のスキージャンプも、青空の下で見たかったなぁ。  photo by Tortured Mind on Visualhunt

王者・羽生のフリースケーティングの後、完璧な演技なら「金」、と臨んだ彼は、最初の4回転で失敗すると「あ。(もう金はナイ)」と笑いが込み上げ、「頑張ろ」とブレることなく自分の演技に集中したという。

この類いまれな、天使のような、宇宙人のような天然さは、日本フィギュア界の宝、といっても過言ではない、と私は思う。

3.平昌五輪で思うこと

今回の平昌五輪、皆さんは 終わってみて、何を思っただろうか。
まだ大会11日目までしか見ていない私だが、これまでで印象的なのは、ドーピング問題で国としての出場が認められなかったOAR (ロシア出身のオリンピックアスリート) の存在だ。


氷上で男女のドラマを演じるアイスダンス。美しい!
  photo by France Olympique on Visualhunt

メダルを獲得するために行なう国ぐるみ、組織ぐるみの薬物使用は、断固として排除しなければならない行為だが、そのために「国」という背景を奪われた選手達が、どんなに心細く、肩身の狭い思いをしているかと思うと心が痛む。

前回のソチ五輪では、これでもか!と思うほどジャラジャラとメダルを獲っていったロシアは、今回OARとなり、今日(2/19)現在、一つの金メダルも獲っていない。

フィギュア女子シングルで金メダル最有力と言われているメドベージェワ、ザギトワ両選手のことは、ファギュアファンとして、心から応援したい。もちろん、小さな全日本女王・宮原知子選手や女子高生スケーター・坂本花織選手と共に!

ああ、それね! もうすっごいドラマがあったんだからぁ!!
と、来週の私が笑っている。

えぇ~っ!!! どうなるの! どうなるのォ!?
もう。笑わないで。 私、本当に楽しみにしてるんだから!


最高の演技で頂点に輝いた、鋼の王者。世界一強い、男の子!!

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