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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.36

真夜中の訪問者

『午後の散歩道』に、ようこそ!

過ごしやすい季節になりましたねぇ。 散歩道を行き来するワンコ達も足取りが軽やかです♪

こんな季節には、少々分厚い文庫本を大人買いして 小説の世界に没入したい。
と、そんな時!
視界の片隅を素早く横切る何か。 え。嘘でしょ? 私が大・大・大嫌いなアノ家庭でよく見る黒い昆虫!? だってアレが出るのは夏でしょうが~(>_<) 今、シンク一帯に視線を走らせたアナタ。 安心して下さい。いませんよ! ウチもありがたいことに、ここ2~3年は、アヤツの姿を見ていない。 どうぞこれからも、ウチには足を向けないでね。来たら必ず、殺すからね!! という物騒な宣言とともにいってみよう。 黒いのだけじゃなく、私の家や友達の家に訪れた、いろんな訪問者の、生と死の物語。 内容がハードなため、写真は美しい秋の景色をお届けします(笑)

1. 春先の訪問者
都会はコンクリート・ジャングル、なんて昔から言われているけれど、住宅地には まだまだ自然がいっぱい。 人やペットだけじゃなく、都会に順応した生き物が、たくさん共存しているのである。
春先は、そんな生き物たちも家族作りに余念がない。

Facebook友達のKクンは、ある年の春、自宅の軒下に作られたツバメの巣の様子を逐一投稿してくれた。ツバメの卵がヒナになり、巣のはしっこから黄色いクチバシをパカッと開いて親鳥の帰りを待つ姿などを、私達は無責任に楽しみ、その都度「いいね」ボタンを押したものである。

友人のM子ちゃんの家では、雨戸の戸袋にコウモリが巣を作り、子コウモリが巣立つまでの1シーズン、見守り続けた。

「わぁ、優しいねぇ! 台風の時も雨戸は閉めなかったの?」と聞くと、
「だって雨戸を閉めようとすると、戸袋の隙間からコウモリが(お願い、やめて下さい!!)って顔して、こっち見るんだもん」と、その時の親コウモリの顔を再現してくれた。

母の思いは人間も動物も同じ♡

豪華マンションに一人で暮らす元同期のCちゃんは、深夜、私にこんなメールを送ってきた。
「キャー! リビングにヤ、ヤモリが~(>_<) 怖くて眠れな~い!!」 「ヤモリは家守って書くの。家を守ってくれるんだから、大事に飼いなさいな~」 と暢気に返信したら、「そうなのね。わかった、頑張ってみる」と言ってきた。 彼女はしばらくヤモリと同居したけれど、ある日、マンションのコンシェルジュのお姉さんに手伝ってもらってカレを捕獲し、近くの学校のグラウンドに放したということだ。 このように、春先は啓蟄(けいちつ・春の暖かさを感じて、冬ごもりをしていた虫たちが、外に這い出してくること)というだけあって、いろんな生き物がひょっこり顔を出し、ヘナチョコな都会人をビビらせる季節なのである。 我が家でも、6年ほど前、夜遊びをして帰った春先の夜中に、3才児の手のひらサイズの蜘蛛が出てきて、私をパニクらせたことがある。 想像してみてほしい。ベージュとグレイを混ぜたような色の、3才児の手のひらが、壁にペタッと貼りついているところを。 私は、アウトドア好きの夫がいる友人に、蜘蛛の姿かたちを詳細に説明し、どうしたらよいか至急要返!のメールを送った。 すると友人の夫が言うには、そんな蜘蛛は都会の住宅地に生息していない。きっと近所の人が飼っている毒蜘蛛のペットに違いないから、噛まれないように注意するがよい。とのこと。 「こ、コレは……毒蜘蛛なの!?」 ギョッとして蜘蛛を見ると、私の緊張のオーラが先方に伝わったのか、蜘蛛もタランとしていた8本の足をペキッ!!と強張らせた。 「うっ。コワイ!!」 私は恐怖に足をもつれさせながら、害虫駆除用に常備している強力な殺虫スプレーを物入れから取り出した。スプレーを握りしめ、蜘蛛がいた壁に視線を走らせると、蜘蛛の姿は消えていた。 私はとりあえずの対策として、ベッド周辺の床や出窓に、ガムテープの粘着面を上にして配置して寝たのだが、蜘蛛がガムテープの罠にかかることなく、朝を迎えた。 ん? いったいこれからナニが出てくるんだ!?

2. 真夜中の訪問者(マジなやつ・閲覧注意!!)
さぁてここからは秋に出てくる恐ろしい生き物の話。 心臓の弱い方は閲覧注意のマジなエピソードだ。

何が怖いって、秋に現れる虫は、越冬する体力と知恵を兼ね備えた選ばれし個体。
春先にチョロチョロ顔を出すヒヨッコな虫とは大きさも根性も違うのだ。

その昔、私が住んでいたアパートは、6畳のワンルームに4畳半のロフト(屋根裏部屋)が付いている、女性限定の住居。
真夜中過ぎに、そろそろ寝るか!とロフトのハシゴを上り、蒲団を敷こうとした時、白木のクローゼットの引き出し部分に、黒光りする大きなアレの姿が目に飛び込んできた。

私はハシゴを転げ落ちるように駆け下り、そんな時のために常備していた殺虫スプレーを持って再びハシゴをよじ登った。
そしてジッと動かない黒い昆虫にむかって、シューっとスプレーをかけた瞬間、ブーン!と羽音をたてて、私のメガネめがけ、ヤツが飛んできたのである。

「ギィャァーーーッ」
私は獣のように野太い悲鳴を上げ、マットレスにメガネごと顔を押しつけた。
それからどれぐらいの時間がたったろうか。マットレスから恐る恐る顔をはなし、あたりを見渡したが、すでにヤツの姿は消えていた。 あれだけスプレーをかけたのだから、アヤツとて生き延びてはいられまい。 そう信じた私は、呼吸を整え、背中にべっとりかいてしまった冷や汗を流すべく、シャワーを浴びた。

さぁ、ここでちょっとひと休み。落ち葉とBaby。いい眺め~♪

私は温かいお湯をたっぷりと浴び、気持ちをスッキリさせて、パジャマに着替えた。
そして洗った髪を乾かそうと、ヘアクリップに手を伸ばした瞬間、何かが「ポトッ」と私の頭のてっぺんに落ちたのだ。

「えっ!?」とつぶやいた途端、全身の神経が逆立った。
そう。落ちてきたのは、さっき殺しそびれたあの黒い昆虫……。
アレは私がシャワーを浴びている間に天井へと上り、シャワーから出てきた私の頭めがけでダイブしてきたのである。

ソレを殺すまで、私は闘った。 途中、過呼吸になり、ビニール袋をくわえながらも闘った。 一度見たら、殺すまで気を抜くべからず。そう自分に言い聞かせた。

真夜中の訪問者、最後の話は、今から3年前の出来事だ。
10月始めに関東へ上陸した、季節外れの台風の夜。
窓を叩く激しい雨と風に、出窓が吹き飛ばされたらどうしよう、と視線を向けたその先に、私の手のひらと同じ大きさの蜘蛛が目に入ったのだった。

そう。それは6年前に私が殺しそびれた、あの蜘蛛の3年後の姿だった。ヤツは私の目の届かない家のどこかで、大きく成長していたのである。

「ばかァ。どうして出てくるのよ。 私の前に出てきたら、生きてはいられないのに!」
私は半泣きになりながら、蜘蛛に話しかけた。
すると蜘蛛も、心なしか困ったような、悲しそうな様子で、ベッド脇の出窓の壁に貼りついている。

しかしもう、私に選択の余地はない。 蜘蛛にはかわいそうだが、死んでもらわねば私もこの家で生きてはゆけないのだ。

だから 出てきちゃダメ!って言ったじゃないか。

外は吹きすさぶ嵐の夜。
私はメガネを外し、部屋を薄暗くして、殺生の恐ろしさを少しでも緩和させようとした。 それからいつもの強力殺虫剤を持ち出し、蜘蛛にシューッと吹きかけた。
蜘蛛は堪らず、出窓の壁からベランダ側の壁へと逃げるが、スピードは遅い。

「ごめんね、ごめんねーッ!!」
私は蜘蛛に詫びながら、殺虫スプレーをボトル半分、吹きかけた。
ボトッ!と重い音をたてて床に落ちたのは、それから間もなくのことだった。

私は始末している最中に生き返ることを恐れて、朝まで蜘蛛の死骸を放置した。
台風一過の清らかな朝日を浴びながら、私は厚手のゴム手袋をはめ、使い古しのタオルで蜘蛛の死骸をくるんだ。
手に持つとずっしり重くて、背筋に寒気が走った。

いかがでしたか? 秋にやってくる真夜中の訪問者。
あなたもきっと一度や二度は、そんな死闘の経験があるのではないだろうか。

あれ以来、まだ私の家に 指定外の訪問者は訪れない。
それでもウチの物置には、いつも殺虫スプレーが置いてある。
お願い、来ないでね。 来たら絶対、殺すからね!!

もう二度と起こってほしくない、恐怖の瞬間(>_<)

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