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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

勘違い & もの忘れ

『午後の散歩道』に、ようこそ!

今年は暖冬だ、と言いながら、やっぱり寒いですよねぇ。
この界隈も、セーターやコートを着て歩いているワンコをよくみかけます。
犬だって寒いんだから、それほど毛深くない人間が寒がるのは当たり前。
コタツが甲羅化しちゃった人もいれば、ホットカーペットの立体模様と化してる人もいるんじゃないだろうか。 だって冬だもの、それでいいじゃないか、人間だもの。
……ということで、今回は、相田みつを風に、人間のダメダメな部分を思いっきり肯定してみようと思う。

一昨年の秋、この散歩道で『忘れ物の女王』(私のこと)と題し、忘れ物について語ったところ、( 私の周りの) 各方面から意見が寄せられた。
女王の座は、まだ誰にも譲っていない。

「鍋の火をつけっ放しにして出歩いたことがある」
「忘れ物を取りに戻ったのに、何を忘れたのか忘れた」
「買い忘れた洗剤を買って家に帰ると、同じ洗剤が3本もあった」

などなど、「私こそ女王よ!」と忘れもの自慢をされる方々が多数いたが、女王の私は、それらすべてを体験済み。 私に言わせれば、まだまだ皆さん、可愛い姫である。

勘違い
『勘違い』を広辞苑で引くと「間違って思い込むこと。思いちがい」とある。

もう10年以上前になるが、私はアメリカの連続ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』にハマったことがある。
アメリカのテロ対策ユニットCTU の敏腕捜査官・ジャックバウアーが、米国初の黒人大統領候補である上院議員の暗殺計画を阻止しつつ、自らの離婚問題や反抗期の娘キムの誘拐事件もからませながら、24時間の時間軸に沿って進行するサスペンス。

日本ではレンタルビデオ(あの頃はまだビデオの時代だった! )での視聴が主流で、新作がリリースされるとTSUTAYAの店頭には、『24』と『冬ソナ』のファンが行列を作ったものである。

この『24』に一足遅れでハマった私は 遅れを取り戻すべく、週末一挙12時間視聴を敢行したのだった。
そう、これこれ! 懐かし~い♪  私はシーズン5で挫折したが…。

その週末、私はTSUTAYAで『24』を大量レンタルし、食材を買い込んで部屋にひきこもった。
海外ドラマは役者本人の声を聞きながら日本語字幕で楽しむのが私のセオリー。
5~6時間もぶっ続けで視聴を続けると、ドラマの効果音、時計の「チッチッ」やCTUの内線電話「ププッ・ピ・ポーッ」が頭から離れなくなり、自分が本当にCTUのスタッフになっちゃった感覚に陥っていく。
そしてある時、喉が渇いてキッチンへ行った私は、ジャックの緊迫した言葉が、字幕を見ずして直接 耳に入ってきたことに気がついた。

(え!? なんで? 私、ジャックが話している内容がわかる!!)
アメリカのドラマにハマッた私は、ついにネイティヴの英語を理解できる耳を持ったのだ!!!

私は冷蔵庫から南アルプスの天然水を出し、グラスに注ぎながら、ジャックと裏切り者ニーナの会話を、胸を高鳴らせ、聞いた。

しかし私の高鳴った胸は、部屋に戻り、転がっているレンタルケースに目を落とした途端にヒューンと萎んだ。ケースには黄色いテープでハッキリと「日本語吹き替え」と記されていたのである。
1巻だけ字幕のビデオがすべて貸出中になっていたため、やむなく日本語吹き替え版のビデオを借りたことを、その時ようやく思い出した。

というのが、私が経験したもっとも残念な勘違いのエピソードだが、人間、こんな勘違いならずとも、日常でいろんな勘違いをしでかすものだ。

昔、受験勉強で頭がボーッとしていたEちゃんは、バスの乗車時、運転士さんに定期を見せるつもりで、ペンケースから鉛筆を出して渡そうとしたという。
その話を笑って聞いていた私も、一人暮らしを始めた当時、地下鉄の切符売り場で、コインメックに自宅の鍵を差し込もうとしたことがある。
このタテ穴に鍵を差し込もうとするなんて……どうかしてるゼ!

コンタクトレンズを右目に二枚装着しようとしたKちゃんを馬鹿にした数日後、私は一日中セーターを後ろ前に着ていた。

夜遊びのし過ぎで寝不足になった 別のKちゃんは、バスに揺られてうたた寝をし、フッと目覚めた時、タクシーと勘違いして「その先で停めて下さい」とつぶやいたそうだ。
それを聞いた時は、作り話じゃないの? と疑ったものだが、考えてみれば私も 市営地下鉄の車内で熟睡し、「次は○○です」というアナウンスを聞いて、無意識に停車ボタンを探したことがあったっけ。

もの忘れ
「物事を忘れること。失念」 by 広辞苑 第六版。

年と共に激しく進行する もの忘れ。 以前はただ忘れたことを思い出して焦ったものだが、最近では やったことを忘れて同じことを繰り返すのもしばしばだ。

朝、飲んだサプリ(α-リポ酸)を忘れて夜にもう一度飲む。
洗顔は一回につき二度すると決めているが、洗っている最中に、何度めだったか忘れて三度洗い、貴重な顔の水分を枯渇させることも日常茶飯事。 最近は洗いながら、「一回め~」と自分に言い聞かす、『声出し確認 』を実施中だ。

先週は、大好きな英会話の先生、英国美女のLindy に日本茶をプレゼントし、「Oh, thank you!」と言われたのに「You are welcome (どういたしまして) 」のひと言が出ず、「I know you ( 私はあなたを知っている )」と、意味不明の返答をしたばかりである。
美しくて優しい英会話の先生Lindy♡ いつもお世話になってます!

もの忘れの激しい人のことを、「三歩歩いたら忘れる、ニワトリのような人」と形容するが、私の場合は、一歩踏み出した途端に、「コケッ?」と出した足を見下ろすぐらいヒドイのである。

学生時代、同じグループにYという子がいた。
彼女はとても楽観的な性格で、嫌なことや辛かった思い出は、一晩眠ればケロリと忘れてしまう人だった。
辛かったことを執念深く覚えている私が、「こうだったじゃない」と言い募ると、
「え? そんなコトあったっけ? 覚えてないや~」
そう言ってカラカラと笑い飛ばす。 するとこちらも、なんだかどうでもいいような気になって、「まぁ、いいけどサ」と、忘れてしまうことになるのである。

Yはそうした性格の反面、とてもしっかりしたところがあって、忘れ物や落し物は一切しない。
みんなで旅行に行くと、部屋の鍵は必ず彼女が持ち、チェックアウトの時まで、きちんと管理してくれたものである。
コレは我が家のドアの内側に貼ったメモ。 これでもまだ忘れる(>_<)

卒業して 別々の道を歩みだしてから、Yと会うことはほとんどなく、年賀状のやりとりで互いの無事を確認していた。
そのYから、今年は賀状が来ないなぁ、と思っていたら、先日 Yのお母さんから書状が届いた。 それは彼女が昨年12月に 病気で亡くなったという知らせだった。

突然のことで、しばらくは実感がわかず呆然としてしまったのだが、年末頃に ふっとYのイメージが頭をよぎったことを思い出した。
もう何年も会わず、昔 親しかった友達、という記憶しかなかったのに、Yはそんな私のところにも、忘れずに ふんわりと お別れをしに来てくれたのかなぁ、と思ったら、急に涙がこみ上げてきて、止まらなくなった。
思い出を抱いて、向こう側へ行っちゃった。 早過ぎるよ、Y。

先日、東京在住のEちゃんと、Yのイメージをアレンジしたお花を抱えて、Yの自宅にお線香を上げに伺った。
その時もやっぱり私は数珠を実家に忘れ、Eちゃんに借りたのだった。

Eちゃんに借りた数珠を握り、手を合わせると、昔と全然変わらないYの笑顔が、
「もう、りかは。 相変わらずなんだから~」と言っているみたいだった。

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