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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.17

女の子の話

『午後の散歩道』に、ようこそ!
散歩道を吹きわたる風は まだ冷たいけれど、午後の日差しは少しずつ春めいてきた。 なかには春の訪れを クシャミで感じる花粉症持ちもいるようだが。(私もその1人(>_<)…クシュン!) 春は待ち遠しいけど、花粉がねぇ

今回の散歩道は、ひな祭りにちなんだ女の子のお話。
未婚・未出産ながら、私の周りには女の子を産み育てた友達がたくさんいる。
友達が出産・子育ての過程で私に聞かせてくれた女児の話は、それぞれに面白おかしく、可愛らしいエピソードだ。 だが、年齢不問の この散歩道での立ち話は、それだけで終わらない。 私の友達が手塩と愛情をたっぷりかけたその子達が、どんなふうに育ったか。 ここでは 女の子達のその後の成長、「出来上がり図」も含めたお話をしようと思う。

女の子はみんな、桃色のホッペ♡

酒を飲むとグダグダになる高校時代の友YNは、シラフの時はシャイで優しい三児の母。
長女のAちゃんが幼稚園の年長さんになった頃、3人目の長男が生まれ、乳飲み子と幼児の世話に忙殺されて、YNはなかなかAちゃんの幼稚園ライフまでケアできなかった。

「Aちゃん、幼稚園は楽しかった?」
下の子のおむつを替えながらYNが声をかけても、Aちゃんは壁をみつめたままブツブツと何事かをつぶやき、振り向こうとしない。

(ヤバイ。 もしかしてスネちゃった?)
心優しいYNは下半身むきだしの長男をソファに置いたまま、恐る恐るAちゃんの様子を見に行った。

「Aちゃーん。何してるのかなぁ?」
YNは、Aちゃんのつぶやく言葉を聞き、愕然としたという。

「アヒルのあ、犬のい、ウサギのう……」
Aちゃんは、その日 幼稚園で習ってきた ひらがなのおさらいを、たった一人、壁に向かってしていたのだった。

「あ」アヒルの「あ」♪ Photo by extatique arc

「Aちゃん、お勉強なら お母さんと一緒にしよう?」
YNは泣きそうになりながら申し出たのだが、独立心の強いAちゃんは、
「一人で出来るから、いい」
キッパリと母の援助を断り、壁に向かって「アヒルのあ」を何度も復唱していたそうである。

「人付き合いが苦手で、孤独な娘になったらどうしよう……」
YNは娘の将来をずいぶんと案じていたが、Aちゃんはその後、両親が技師として勤務する総合病院に就職した。
「お父さん・お母さんと一緒に働くのが夢だったんだぁ」
Aちゃんは そんな夢をちっちゃな胸に秘め、壁に向かって「アヒルのあ」を一生懸命つぶやいていたのである。

高校時代のもう一人の友S子には、天真爛漫な娘・Kミちゃんがいる。
Kミちゃんは幼女時代、公園に遊びに行くのが大好きだった。
炎天下だろうが台風だろうが、「公園」という言葉を聞くと、行かずにはいられない。

友人達でS子の家を訪ねた時、S子は私達を物陰に呼び、Kミちゃんに聞こえないように、
「今から『公園』は禁句だからね。言いたい場合はParkの『P』って言って!」
私達に隠語の指定をするほど、Kミちゃんの公園愛は強かった。

公園大好き!お散歩ガール Photo by Izabela Pawlicka

ある年のお正月。S子はKミちゃんと親戚の集まりのなかにいた。
Kミちゃんは明るく元気な女の子なので、いつも集まりの中心にいる。
そこで何か……従姉の子どものオモチャを取ったとか、ほんのささいな悪さをKミちゃんがした時、S子はハタと考えたという。

今までKミを伸び伸びと育ててきたけれど、皆の輪のなかで悪さをしたら、ちゃんと叱らないとダメだ。社会性が欠落した子になってしまう。

そこでS子は思いきって声を荒げ、
「どうしてそんなことするの!? ちゃんと謝りなさい!」
息を飲む従姉達の前で、Kミちゃんを叱りつけた。
するとKミちゃんは顔を真っ赤にし、目から涙をポロポロ流しながら、

「あけっ……あけまして、おめでとうございましゅ!!」
と叫んだそうだ。
Kミちゃんは突然叱られたショックで、「ごめんなさい」より先に、さっき交わした新年のあいさつが 口をついて出たものと思われる。

S子の話に笑い転げながら、私は生まれもったKミちゃんのキャラクターと、彼女の持ち味を尊重して接するS子の子育てスタンスを、いいなぁ、と思ったものだ。

そんなKミちゃんはS子の愛情を受けてすくすくと成長し、大学時代に学校公認で学生結婚をした。 S子の夫であるKミちゃんの父親は、ショックのあまり3日3晩リアルに泣き続けたそうだが、彼女はちゃんと大学を卒業し、今では立派な家庭を築いている。
「私のこと、おばあちゃんって呼んだら絶交だからね!」
S子は若過ぎる祖母として、Kミちゃんの子育てをサポートしている。

仕事仲間HT君の愛娘・Mちゃんは、現在1才2か月の現役女児。
この子が産まれた一昨年の年末、私は課のメンバーを代表して出産祝いを買いに行った。 選んだのは、おフランスのちょっとお洒落な吊り下げメリー(吊り下げ型の回転おもちゃ) だったが、

「アレを回すと、泣き止むんですよ」
HT君がお礼がてら報告してくれて以来、私はMちゃんに対し、勝手に親近感を抱いている。

仕事でストレスが溜まった時、私はHT君のそばににじり寄り、
「ねぇねぇ。 今日のM画像を見せてよぉ〜」と彼にせがむ。
そうしてiPhoneの容量いっぱいに記録されたMちゃんの画像を鑑賞し、
「あ〜可愛かった♡ さ、仕事しよっと」
リフレッシュして次の業務に励むのである。

HT君によると、Mちゃんは最近第一次反抗期を迎えたようで、何を言ってもイヤイヤ!と、言うことを聞かない。HT君の愛妻Mさんが、
「イヤでも危ないからダメ!」と叱ると、うつむいてピキッと固まってしまうという。

実録!ピキッと固まるMちゃん。

「どうしようもないワガママ女になっちゃいそうで……」
父親の顔で溜め息をつくHT君に、
「大丈夫よ! 時期がくれば、ものわかりだって良くなるから」
私はハハハと笑って肩を叩いた。
子育て経験もない女の 無責任な発言のようだが、今までいろんな女児の成長を見てきた私には、叱られてピキッと固まるMちゃんが、健全な成長過程にあることを知っている。
「だといいんスけどねぇ」
「大丈夫! 絶対いい子に育つから◎」
Mちゃんの将来に太鼓判を押しながら、なぜか私は学生結婚をしたS子の娘Kミちゃんのことを思い出していた……。

さて私の周りの女の子の話、ラストはビタママ編集部Y子の長女・Sの話。

独身の私を置き去りにして、幸せな結婚をしたY子。
しばらくは家事のかたわら、音楽ホールで働いたり英語の個人レッスンを受けたりしていたのだが、ある日ついに彼女のもとにコウノトリが飛んできた。

「赤ちゃんができたっぽい」というY子の報告に、
「できたっぽいって何よ」と問いただすと、Y子は少し顔を曇らせ、
「心音が弱過ぎるって、お医者さんが言うの」
まだペッタンコのお腹に手を当てて、Y子は
「でも、ここにいるって、あたし、ちゃんとわかるんだ」

こんな時なんと答えてよいか、口ごもる私に、
「でね、別の産科に行って診てもらったの」
「そ、それでどうだったの?」
「心音は弱いけど、大丈夫ですよって。その病院で初めて、おめでとうございますって言われた」

「そっかぁ。 良かったね、Y子。 おめでとう!!」
大きな目を涙で潤ませて笑ったY子の顔を、私は今でも忘れられない。

心音が弱くて出産が危ぶまれたその子は、やがてY子の長女・Sとして、この世に生まれてきた。
お腹のなかで弱々しかった分、出てきたSは健康だった。
学生時代は陸上部で活躍し、今では誰よりも完璧に『ようかい体操第一』を踊れる元気女子に成長した。
Sは人気企業に就職が決まり、この春から社会人として広い世の中の大空へと飛び立つ。

スクスク育ったY子の娘たち。 かわゆすなぁ♡

桃の節句にちなんだ女の子のお話はこれでおしまい。
「でもウチ、男の子なのよね」とおっしゃる男児のお母さん、端午の節句まで しばしお待ちを。

その頃はこの散歩道にも、色鮮やかな野の花が咲き揃っているはずだ。

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