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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.14

家族の一員

『午後の散歩道』に、ようこそ!
真冬になっちゃいましたねぇ。 今年はお正月から雪が降って、この散歩道にひなたぼっこしに来る野良猫たちも、スズメみたいに身体をまん丸にふくらませて、ジーッとしたまま動かない。

まだ春は遠いけど、猫達と午後の日差しを浴びなながら、話をすすめたい。
今回のテーマはペット。 ということで、エピソードだけじゃなく、可愛いペット画像も満載でお届けしよう。 画像の提供元は、私の周囲に生息する ペットの飼い主達である。 ご協力に感謝〜!

「何して遊ぼ♪」Wちゃん家のおすましAちゃん

4年半前の9月のこと。
会社の先輩Tさんから、突然 画像付きのメールが来た。
「え〜ん、飼うことになっちゃったぁ(>_<)」 画像を見ると、ロングコートチワワと思しき子犬がこっちをみつめている。 「そんなつもりじゃなかったのに、そういうことになっちゃって(T_T)」 子犬を飼うことになった人は、普通 嬉しくてハートや音符の絵文字を使うだろうに、Tさんのメールは悲壮さを漂わす顔文字ばかりである。 週明けに会社で詳しく事情を聞くと、こんな経緯だった。 Tさんと近所に住むお姉さんは、買い物途中 ショッピングモールの一角にあるペットショップで、ずらりと並ぶ愛くるしい子犬や子猫にみとれるうち、片隅にいる一匹に目が行った。 母親から乳離れしてすぐのちっちゃな子達のなかで、その一匹は あきらかに身体が大きく、赤ちゃんっぽさがない。 他の子の値段は何十万もするのに、その子にはイチキュッパの赤札が付けられていたという。 「アタシのこと、呼んだ?」Tさん家のナナちゃん

「あの子、いったいどうなるのかなぁ…」
買い物の後、ランチをしながら ふと口にすると、
「アンタしかいないわよ、あの子を救えるのは!」
お姉さんは思いつめたような強い口調で、ペットOKの新築マンションに住んでいるTさんに、子犬を引き取るよう説得したという。

「これでアタシの気ままな生活も終わったわ……」
憂鬱な顔でそうつぶやいたTさんは、言葉通り、働きながらナナちゃんの朝晩の散歩を欠かさず、鶏のささ身と野菜を細かく砕いたお手製のエサを与える日々を送っている。犬を飼いはじめてから、Tさんの睡眠時間は2時間程減ったそうだ。

そうした飼い主の苦労などちっとも知らない赤札のナナちゃんは、新築の部屋の至る所に粗相をし、Tさんの大事なアクセサリーや小物を引っ張り出しては壊してしまうイタズラワンコだった。 根っから陽気な性格で、ちょっとでも可愛がってくれそうな人を見ると全速力で駆け寄り、「褒めて撫でて〜」とひっくり返ってお腹を丸出しにするのも、飼い主としては困った性分としか思えない。
「ダメッて言っても聞きやしないけど、舌打ちにだけは反応するのよね」
フッと皮肉っぽく笑ったTさんは、当時確かに育児ノイローゼにかかっていたと思われる。

何のお勉強? イエ、視線の先にはおやつが(笑)

東日本大震災が起こった日、Tさんの家には、ナナちゃんの他に、旅行中のお姉さんから預かった愛犬ケンちゃんがいた。 終業のチャイムが鳴った時は、まだ外がどんな状況なのかもわからなかったのだが、
「ナナちゃんとケンちゃんが心配だから、アタシ帰る!」
Tさんはそう言って一人会社を出、数時間歩き通して自宅へ戻った。
二匹の無事を確かめると、Tさんは荷物を置いて彼らを連れ、夜の散歩に出たという。

あれから数年がたち、ナナちゃんのイタズラ癖もだいぶ治まってきたようだ。
「ウチのナナちゃんは、ホントにいい子なの!」
今ではTさんもすっかり親バカの顔になり、パソコンの壁紙のナナちゃんに癒されて、毎日の仕事に励んでいる。

考えてるようで、何も考えてはイナイ。  H家の愛犬g太郎

ペットショップでTさんのように運命の出会いをする人は多いと思うが、私が子どもの頃は、犬も猫も雑種がほとんどで、どこかから貰ったり 家族の誰かが拾ってきた子を飼う、というのが主流だった。

高校時代からの仲良し・S子の家のむっくんは、S子の弟が近所から貰ってきた雑種のオス犬。 当時ほとんどの飼い犬がそうだったように、むっくんも庭の犬小屋に繋がれた外犬だ。 性格は温厚で寂しがり屋。
というと聞こえはいいが、むっくんの気の小ささは並外れていた。
犬小屋の前に置かれたエサの皿を、根性の座った野良猫が盗み食いしに来ると、むっくんは尻尾を股の間にはさみ、見て見ぬふりをして猫のネコババをやり過ごすのだという。
夏の日に面白いテレビを見て家族全員で盛り上がっていると、むっくんは自分も仲間に入りたくなり、網戸に体当たりして茶の間に乱入する。 S子の家は、むっくんが生きている間、ずっと網戸が破れたままだったそうだ。

手のひらサイズの癒し系、Mちゃん家のしろみちゃん

児童文学仲間・Yさんの愛犬チャチャには脱走癖があり、主人の留守中に首輪をスルリと抜け、庭の柵を越えて外の世界へと飛び出してゆく。 脱走に気づいたYさんと息子は、大声で名前を呼びながら方々を探すのだが、とんと戻らない。 そこで数日後、Yさんが保健所の動物愛護センターへ行くと、テンション丸下がりのチャチャが迷い犬のケージで震えているのだという。

これではダメだと、首輪を抜けにくい物に替え、庭の柵を補強した数日後の晩のこと。Yさんが最寄駅から原付バイクで帰宅する途中、見慣れた黒いかたまりとすれ違った。 「ん!?」 と思ってバイクを止め 振り向くと、黒いかたまりも立ち止ってこちらを 「ん!?」 と見た。

「チャチャ! アンタはまたぁッ!!」
カーッとなったYさんが怒鳴りつけると、チャチャは物凄いスピードで来た道を逆走した。 驚き呆れたYさんが原付バイクで帰宅すると、補強した柵の下には穴が掘られている。 抜けた首輪の横でチャチャが「オイラは何も知りやせん♪」という顔で、尻尾をフリフリしていたそうだ。

お正月は おせち料理を頂く。  ライターAの愛猫Tくん

犬の話題が続いたので、次は猫。
世間では「犬派」と「猫派」がいると言われているが、私は大人になるまではっきりと犬派を名乗っていた。 家では私が中学に上がるまで ずっと犬を飼っていたし、「おいで!」と呼ぶと尻尾を振って飛び込んできてくれる犬と違い、「子どもの相手なんかするもんか」という雰囲気を全身から発している猫は、少々ハードルが高かった。

しかしそんな未熟者の私も いろんな経験を積み、だんだん猫の魅力がわかる女になってきたのである。
猫の可愛さに衝撃を受けたのは、会社を辞めてプー生活を始めた頃だ。

プーの私が泊りがけで旧友の家へ遊びに行った日。
そこには真っ黒でつぶらな瞳の子猫がいた。
子猫はまん丸の目で私をみつめ、ミィミィと鳴いてフカフカの身体を摺り寄せてくる。 ちっちゃな手足はパーの形に開き、もっとちっちゃなピンク色の肉球を、プニプニと私の指に吸いつけてくる。

夜、子猫は私のほっぺたに顔をくっつけて、ゴロロロロロと喉を鳴らす。
(ひゃ〜っ。もうたまらん!)
世の中に、こんな可愛い動物がいたのか。
私はその晩から、世界を犬派と猫派に分類する狭量な考え方を捨てた。

「このエリ、早く取ってー」 エリザベスカラーのRちゃん

さて、犬・猫と語ってきたペットの話。 最後は鳥でおしまいにしよう。
従姉が飼っていたダルマインコのダリちゃんは、お喋りがとっても上手。
「ダリちゃん、いい子ね」と話しかけると、
「ダリちゃん、いい子ね」と自分を讃える。
「ダリちゃん、それダメ」と注意すると、
「ダリちゃん、ダメよ〜」と、日本エレキテル連合風に切り返す。

ダリちゃんは従姉の高校入学のお祝いに両親からプレゼントされた鳥で、私が物心ついた時からずーっと 従姉の家で暮らしていた。
手乗りじゃないので、鳥かご越しにしか見られないのが子供心には物足りなかったが、この子の物真似には いつも驚かされた。

当時住んでいた従姉の住居は東京下町の仕舞屋(しもたや)で、昼間は鍵もかけない開放的な家だった。
玄関の引き戸をガラガラと開け、「おばちゃーん」と呼びかけると、

中で「ガラガラ、ピシャッ! おばちゃーん」と録音再生のような音声が聞こえてくる。これがダリちゃんなのである。
部屋の奥から、伯父が「ゴホッゴホホホホ!」と咳き込む声が聞こえるので、今日は伯父さん居るんだな、と思えば、そう。それはダリちゃんの物真似。
(すごいよ、ダリちゃん)
その技の正確さと、それを繰り出す絶妙なタイミングは、江戸家猫八を完全に凌駕してるな、と子どもの私は心からリスペクトしたものだ。

最近はこんなペットも!ハリネズミのちーちゃん

ダリちゃんは鳥かごの中でお喋りしながら、従姉の家を28年、見守り続けた。 晩年はカラフルだった羽の色が色褪せ、口数少なになったけれど、十八番の「ゴホッゴホホホホ!」は、最後まで健在だった。

ダリちゃんの写真は、亡くなった伯父の仏壇の 一つ下の棚に飾られている。
従姉は毎年、ダリちゃんと この家で命を終えた他のペット達を、お寺で供養してもらっているそうだ。

ペットの飼い主達は皆、命を丸々引き受けて、大事に育て 慈しむ。
その子を家族の一員として、生きる喜びと、別れの悲しみを共有する。
今はまだ その覚悟を持つことができないけれど、いつか私も、小さな相棒と暮らす日々を夢見て、毎日を過ごしている。

肉球が、世界の平和を守っている!

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