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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.08

けもの道のレシピ

『午後の散歩道』に、ようこそ!
外はすっかり秋模様ですね。暑くも寒くもないこの季節が、私は大好き♪

秋が好き、と初めて自覚したのは 三十路を過ぎてからのこと。それまでは断然、夏が好きだった。 友達と車を相乗りし、好きな曲をガンガンにかけて、国道134号線の海岸線を突っ走る。Tシャツの下はもちろんビキニ。 渋滞したって、裏道抜ければ大丈夫!

江の島と国道134号線。ユーミンとサザンの曲が聞こえてくる!

夏より秋が好きになった時、私もトシを取ったなぁ、としんみり思った。

そして、人はしんみりした後、なぜかお腹がググーっと空くのである。
これを読んでくれている方は、その狭間にいるかもしれないが、人は三十路前後に、食べ物の嗜好が変わる。
ある日、パスタとサラダより 炊き込みご飯と豚汁に惹かれる自分がいる。私もゴボウの香りがイイ!と思った時、大人になったなァと実感したものだ。

というわけで、今回の散歩道は 私の好きな食べ物の話。
それもお店で食べる料理ではなく、自分で作る料理の話だ。

これに先立ち、まずお断りしておくが、私はまったく料理上手ではナイ。
一人暮らしなので一応料理はするが、子どもがいない暢気な独身女の作るものといえば、買ってきたものを切って焼くか、煮るか、茹でるか、蒸すか。それだけ。 手際が悪いので、よっぽどのことがない限り、手の込んだ料理はしない。 また、主婦の方々のように冷蔵庫にある食材を使ってチャチャッと2〜3品、なんてカッコイイ手腕も持ち合わせていないのである。

料理は下手だが食いしん坊。 それが私という人間である。 何か文句ある?
そんな逆切れ気味の告白をした上で、美味しい物の話をスタートさせよう。

森のけもの達が、エサ場から巣穴まで自分達だけの道を通るように、私にも「他の人がどう思おうと、自分だけは美味しいと思う」料理がある。

そのトップバッターとして送り出したいのが、2日目のカレー。
は? 2日目って……じゃあ、1日目のカレーはどうやって作るのさ!と、今、私の耳に ビタママ編集部Y子のツッコミの声が。だからさ〜Y子、最初に申し上げた通り、独身勤労作家が作る料理など、大したモンじゃないのよ。 1日目のカレーは、市販のルー( 辛いのが得意じゃないので、中辛 )の外箱に書かれた食材を、気持ちばかりのニンニクで炒めて煮込んでルーを割り入れてハイ!出来上がり◎
日本中のご家庭で美味しく作られる標準的なカレーを、私も作って食べるのである。

カレーは日本人のソウルフード。

で、カレーのルーが煮込んだ具に馴染んで、1日目よりもっと美味しくなる2日目のカレー。
私はここに牛乳と細く刻んだ生のピーマンを入れる。 これを数分煮込んで出来上がるのが、「他の人がどう思おうと、自分だけは美味しい」2日目のカレーだ♪ 牛乳のまろやかさとピーマンの青っぽい香りが、前日のガッツリ感を払拭し、胃袋にも心にも優しく沁み込んでくるのだ。ちなみに、鍋底に残った三日目のカレーは、水で薄めてめんつゆを加え、そこにゆでうどんを投入して最後に溶いた片栗粉を入れ、カレーうどんにする。

この「他の人はどうでもいいと思うかもしれない」カレーレシピを考案したのは、3年前に亡くなった私の父だ。 父は典型的な昭和の男で、家の中のことはすべて母に任せっきりの仕事人間だったが、休みの日に晩酌をする時だけはマメに台所に入り、イソイソと酒の肴などを作っていた。

作るといっても、大したことをするわけじゃない。キュウリを長めに切って味噌を乗っけるとか、塩茹でしたほうれん草の芯のピンク色の部分だけを集め、それにかつお節と醤油をふりかけるとか、シイタケの軸を細く裂いてサラダ油と醤油で炒めるとか。

父はそういうちょっとした肴を小皿に盛ってお膳に並べ、それらをツマミに酒を飲むのが好きだった。 幼い私は、父のかいたあぐらの上にちょこんと座り、ズラっと並んだ塩分高めの小皿ツマミをつまみながら、母の料理が出来るのを待っていたのである。

その頃に食べた色々な物の記憶は、大人になった私の食生活にも、多大な影響を及ぼしていると思う。私は父と違って酒が弱く、晩酌を楽しむ習慣はないのだが、酒飲みの友達と居酒屋に行き、酒に合う肴をあれこれとつまむのは大好きだ。

飲めないくせに 居酒屋は好き♪

長いこと洋酒メーカーで働いている私には、老若男女問わず酒飲みの友達が多く、彼らからはいつも、
「酒が飲めないなんて、人生の半分の楽しみを損してるのと同じだ」と
憐れまれている。 陽気な酒豪があっちこっちでやらかす 楽しくおバカな武勇伝を見聞きするたび、あ〜、私も飲めたらなァ。と寂しい気持ちになるのだが、自分は飲めない分、健康を保って美味しい物を生涯に渡り、食べ尽くしてやる!と日々心に言い聞かせている。

おっと。話しが酒に流れてしまった!
誰がどう思おうと、自分だけは美味しいと思う2品めは、二日目のシチュー。
二日目続きで申し訳なく思うのだが、普通に美味しい一日目のおかずをちょっとアレンジするだけで、王道から外れた、けもの道のご馳走が手に入るのだと私は信じている。二日目の「ちょい足し」に、私は大いなるこだわりとロマンを感じるのである。

料理初日に食べるシチューは、カレー同様ごく普通のもの。市販のホワイトシチューでじゃがいも・たまねぎ・ニンジンなど、定番の野菜と鶏肉などを煮込んで作る。季節により、鶏肉がホタテやカキに替わることもある。
そして待望の二日目。 牛乳で少しのばしたシチューに、私は皮を裂いた明太子を一本、投入しちゃうのである。すると、さっきまで白かったシチューがうっすらとピンク色に生まれ変わり、なんだか妙に女子力の高い食べ物に変身するのだが……ちょい足しはここで終わらない。私はココに、更に納豆を入れるのだ!

あ……今、端末の向こうで引いたでしょ? せっかくピンクに色づいたシチューに納豆なんて、キモチワルイ。まるで 清らかな少女の顔に、突如醜いアバタがブツブツと噴出するような〜(>_<) 料理画像は事情により、掲載できません……。

ふふ。 いいんですよ奥さん。 誰がどう思おうと、自分だけが美味しけりゃ。 それがけもの道のレシピというものなのです。
確かに外見は、乙一の小説に出てくるようなグロさがある。しかしこれを平らによそったゴハンの上にかけてワシャワシャと食べると……。
悪魔的な旨さに、世界中に嫌われたって、私だけはお前を愛する!とアバタの乙女を力いっぱい抱きしめたくなるのである。

さて次にご紹介するのは、自分だけじゃなく、他の人にも共感してもらえそうな料理。 私が毎週土日の朝に作って食べている「休日のオムレツ」だ。
洋食はオムレツに始まり、オムレツに終わる。 そんな格言があるほど、奥の深い卵料理。 だからって私が奥の深い料理をご紹介するとは思わないでいただきたい。 私が作っているのは、ちょっと具だくさんだけど、誰でも簡単にできちゃう、普通のオムレツである。

具の野菜は、ニンジン、シイタケ、ピーマン、タマネギ。これを刻んでサラダオイルで炒め、塩・コショーで味を調える。 卵を割り入れたボウルに、刻んだ大葉と2〜3mmに角切りしたスモークチーズを散らす。ここに炒めた野菜を入れ、全体を軽くかき混ぜて、オリーブオールをひいたフライパンで焼く。焼きあがったオムレツを皿に移し、ケチャップをかけて、ハイ出来上がり。
具だくさんの野菜とふわっとした卵に、大葉とスモークチーズの香りが大人っぽさを添えて、なかなかに深い味わいのオムレツになる。

他の人にも共感してもらえる料理を続けてもう一品。
フライパンで作れる簡単パエリア。
これは共感してもらえそう、じゃなく、実際に友達から「美味しい」と評価を受けた実績ある品である。 最近は友達を家に呼ぶ時はもっぱら鍋料理になってしまうのだが、小説家を夢見てプー生活を送っていた頃、よくこの簡単パエリアを作ったものだ。作り方はごくシンプルで、出来映えはマドリードの路地にある料理屋(行ったことないが)並みの優れもの料理☆

これはお店のパエリア。でも、けもの道も負けてはいない。

材料は、米(日本米)、アサリやムールなどの貝類(殻付き)、同じく殻付きの海老、ニンニク、タマネギ、パプリカ、レモン、サフラン、白ワイン。

まず、水で米を軽〜く洗い、ザルに上げておく。次に米と同量の湯を沸騰させ、そこにサフランをひとつまみ入れて軽く煮出し、黄金色に色づけたら火を止めて冷ましておく。
フライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクを炒めて香りが出たら、タマネギと貝類を入れてガラガラと炒める。 タマネギが透明になってきたら、白ワインをドボッとひとかけし、海老も加える。 海老の殻が少し変わってきたところで米をザザッと投入し、合わせて黄金色のサフラン水を入れて軽く混ぜ合わせ、パプリカを乗せてからフライパンに蓋をし、米を炊く。
火加減は、具材が煮立つまでは強火で、それ以降は弱火で20〜30分。 蓋を開けて 炊き上がったかな〜と思ったら、もう一度強火で2〜3分。フライパンの底から パチパチとちっちゃな音が聞こえてくるのは、美味しいおこげが出来てる合図だ。ここで火を止め、レモンを絞ったら……さぁ、みんなの大好きなパエリアの出来上がり♪

料理のポイントは、具材とサフランをケチらないこと。これに尽きる。あとは火と油と食材が手に手を取って、勝手に美味しくなってくれるのだ。

そうそう。 いつもパエリアと一緒に作っていた冷製スープも、ついでにここで紹介しておこう。これは何年も前に、平野レミがテレビで作っていたスープである。 作り方は超簡単。 牛乳とトマトジュースを1対1の割合でボウルに入れ、オタマでかき混ぜて塩・コショーで味を調え、器によそってドライパセリをパラパラとかける……以上! これだけの材料でビックリするほど上品なお味になるのだから、平野レミって本当に天才だと思う。

プーの時代、私は食材を 招いた友達とワリ勘にしてもらっていた。サフランはスペイン旅行に行った友達のおみやげである。
皆、私が貧乏なことを知っているので嫌な顔はせず、美味しい〜!と喜んで食べてくれた。 作るたびに友達の優しさを思い出す、懐かしい料理である。

ワタシだけが知っている、けもの道のおいしさ♪

料理下手な独身女が綴る料理エッセイ、最後の一品は、私の食生活を支えていると言ってもいい「野菜スープ」のご紹介。
この野菜スープを、私は毎週 大鍋に作ってタッパーに小分けし、他のおかずと共に毎日飽きずに食べている。 その食習慣は、数年間変わっていない。

最初に教えてくれたのは、友達のQちゃんだ。 彼女は食習慣に関する学問で博士号を持つ学者なのだが、まったく学者ぶったところのない、優しくてフレンドリーな女性である。その彼女が、便秘を解消するデトックス料理として、野菜スープのレシピを紹介してくれたのだ。

彼女によれば、デトックス効果がある野菜は根菜と葉物とトマト。豆やイモ類は吸収を助けるためNGであるという。水にコンソメを入れて煮立たせた鍋に、火が通りにくい順に切った野菜を入れ、最後にホールトマトを加えて塩・コショーで味を調えて出来上がり。 これを1食で食べ尽くすもよし、3日に分けて他のおかずと共に食べるもよし。 野菜類がもたらす酵素のパワーで、絶大なデトックス(毒出し)効果が期待できるというのである。

私は特に便秘症というわけではないのだが、長い年月 好き勝手に生きてきた結果、体内にはいろんな毒が溜まっているような気がしていたため、その毒を一掃しようじゃないか!と、作ってみた。

作り始めの頃は、野菜だけのスープが物足りなく思い、これに炒めたベーコンを加えたりしたのだが、作り続けるうちに、野菜そのものの味に馴染んできて、他の具材が不要になってきた。そして野菜それぞれの持つ甘味や香りを「すごく美味しい」と思えるようになった時、塩・コショーも加えるのをやめた。

では、誰がなんと言おうと自分だけは美味しいと思う、その野菜スープのレシピを。
使う野菜はQちゃんの教え通り、豆・イモ類を除いた根菜と葉物、そして生トマト。 ちなみに昨夜使ったスープの野菜は以下の種類。
1.カブ 2.ピーマン 3.セロリ 4.キャベツ 5.小松菜 6.ごぼう 7.ニンジン 8.シイタケ 9.エノキ 10.パプリカ(赤) 11.パプリカ(黄) 12.ショウガ 13.モヤシ 14.タマネギ 15.トマト

これを全部入れちゃう!

この15種類の野菜を、大鍋にブイヨン一つの湯で煮るだけなのだが、食感と外見を考慮するのが私のひと手間。 カブは8等分に切ったものを先に茹でて別に置き、すぐ色が変わるピーマンもさっと湯がいて冷水で冷やしておく。ピーマンほどじゃないけれど、やっぱり色が変わりやすい3〜5の葉物類も、先に湯がいてザルに上げ、菜箸で混ぜてあら熱を取って置いておく。あとの6〜15の野菜は、順番に食べよい大きさに切っては鍋に入れ、切っては鍋に入れを繰り返す。

出来上がったスープは冷ましてカブを入れ、タッパーに小分けして冷蔵。 青物も別の容器で冷蔵し、食べる時に小分けタッパーに加えてレンジでチン。これで彩りの鮮やかな野菜スープを一週間楽しめる♪

味付けしない野菜スープは、肉や魚など、他の料理の味を邪魔しない。それでいて、他の料理で摂った余分な塩分や油分を私の腸内でエイヤ!と駆除してくれているような気がする。
これを食べはじめて、具体的に何が変わったとは言えないが、風邪を引きにくい健康な身体になったことは確かだ。

私は 野菜をたくさん食べると、なんだかそれだけで こんな自分でも一生懸命生きている、という気持ちになれる。思い込みだとわかっていても、食べることで気持ちが上がるのは 悪いことじゃない。

今日の朝食。女一匹、一生懸命 生きております。

他の人がどう思おうと自分だけは美味しいと思う料理、私の手持ちはまぁ、こんなモノだ。
フフン、大したことないわね! と鼻を鳴らす諸姉も多いハズ。 紹介したレシピのすべてに、詳しい分量が書かれてない、と呆れている方もいるだろう。 私も今読み返して、それに気がつき驚いている。
でもご安心を。分量はすべて「適当」で大丈夫。 その時食べたいと思う量を本能のままに。それが「けもの道のレシピ」の極意なのである。

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