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連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.01

夢の話

『午後の散歩道』に、ようこそ!

窓の外はどんよりと湿った雨空でも、
ここに来れば、いつも晴れわたる青空。
緑の木々を吹き抜ける風が
あなたの髪をふわりと撫ぜていく……。
このコーナーが、そんなふうになればいいなぁ♪
それが今の私の夢だ。

さて、その夢の話。
前回は、作家になろうと必死にもがいた 過去の自分を綴ったが、
皆さんは子どもの頃、どんな人になりたいと思っていたのだろうか。
ケーキ屋さん?
スチュワーデス(今はキャビン・アテンダント)?

昔、卒業アルバムの『将来の夢』のページに
正々堂々「お嫁さん」と書いたH子ちゃん。
ウーマンリブが叫ばれていた時代だったため、
これには すぐに女性担任の指導が入った。
その結果、アルバムに載ったH子ちゃんの夢は、
お嫁さんから保母さんに変わっていた。
当時の私はH子ちゃんと先生のやりとりを見て
お嫁さんになるのが夢なんて「ありえねぇ…」と、
心のなかで鼻白んだものだが、
今ならそれが、地に足がついた素晴らしい夢だったと
ハッキリわかる。

みんな昔は小学生だった♪
「大人になったら、世界一のサッカー選手になりたい
と言うより、なる」

そんな夢を描いて、実現への道を
走り続けている男前がいる一方、

「えーっと。 ん? アタシっていったい
 何になりたかったんだっけ?」

うーん、とうなりながら 麦茶をひと口すすった途端、
今夜のおかずの付け合せに 意識が飛んでいっちゃう人が
きっとたくさんいるに違いない。

かくいう私も、20代のなかば過ぎまで
子どもの頃の夢など忘れていたクチだ。
あの頃の私は、恋愛とお洋服のことしか頭にない、
ごく普通の女の子人生を歩んでいたのである。

サン・ローランのウェッジシューズに、ヴィトンのバッグ。
ALPHA CUBICのベルベットのドレスは、とっておきの勝負服。

え? ALPHA CUBIC ?
山田りか って、いったい何才??
サン・ローランのあたりから、??と疑問を抱いてしまった方、
イエ、トシの話はちょっと……(笑)
『午後の散歩道』に年齢は不問。
まぁ、私のことは、「バブルを知っている女」
とでも思っていただければ よいかと。

あの頃は、なにかとお金がかかった。
話しを元に戻そう。
実家住まいで、東京の会社に通っていた頃、
食費と貯金はほんの少しだけして、
私は残った給料のほとんどを、洋服代と遊興費に充てていた。

仕事が終われば街へと繰り出し、
仲の良い友達とショッピングや恋バナに、時間を忘れて盛り上がる。

そんな能天気な暮らしのなかで、私達 女の子の夢はただ一つ、
好きな人と出会い、結ばれること。

純白のウエディング・ドレスを身にまとい、
自分だけの大切な人と、永遠の愛を誓う。
今も昔も変わらない、それが女の子達の、幸せの王道である。

洋服もメイクも合コンも旅行も、すべての道はチャペルへと続く。
今、思えば、私達はそう信じて、夢の実現に向け
そのための投資をしていたのかもしれない。

そして20代のなかばを過ぎる頃、
恋バナに花を咲かせた女友達は、一人、また一人と
夢をかなえて お嫁に行った。

パッチリお目々が可愛いと、各方面から評判だった
ビタママ編集部のY子とて、すったもんだの恋愛の末、
少年の目をした素敵な男 (当時) と、
素敵なホテル (これは現存) で挙式を挙げた。

しかし私だけは……!
OH (>_<) なんということだろう。 中・高・短大・会社と、そこそこの道を歩み 「いい娘さんねぇ」と近所のおばさん達から褒められてきた この私が! 花嫁のブーケなら、何個ももらった……。

好きな人には愛されず、私を「いいね!」と言ってくれる
奇特な紳士は好きになれず。

恋愛がうまくいかないということは
私にとって、人生で初めての挫折であった。

願っても、どうしてもかなえられない。
苦しい恋から逃れるように、私は当時流行っていた
カルチャースクールに通いはじめた。

エアロビクスに絵画教室、料理教室に手作り絵本講座。
ジャンルを問わず、様々な趣味の扉を開けてゆくうち、
辿り着いたのが、創作童話の教室だ。

それは 創作児童文学の 初心者向けの夜間講座で、
有名な作家の先生が1回ずつ交代で
創作童話の基礎について講義をしてくれるコースだった。

講師達はそれぞれ自分の作品や名作短編の一節をテキストに、
創作の世界の楽しさを教えてくれた。

何を書いても、どんな結末でも構わない。

講義の後は 頭の中で、まだ作られていない自分の物語が
ぐるぐると渦巻いて、眠れなくなった。

物語が持つ、その自由さと奥深さに私は文字通り、夢中になった。

「人は誰でも、一冊の本を書けるんです。
 あなたが生きてきた人生そのものが、 一つの物語なんですよ」

一人の講師の言葉を聞いて、ある日 私は本棚の奥に眠っていた
小学校の卒業アルバムを引っぱり出した。

懐かしさに頬をゆるませ、集合写真の仲間と自分をつぶさに見た後、
アルバムの後ろに収録された
『将来の夢』のページを開いて愕然とした。

「看護婦」と「獣医」の間に私が書いた将来の夢は、
「女流作家」だった。

作家にわざわざ「女流」とつけるところが
あざとくて可愛げのない子どもだったと
過去の自分を苦々しく感じたものの、
その四文字を見て
(そうか、そういうことだったのか)と
都合良く 運命を感じてしまったのである。

あのアルバムに「お嫁さん」と書き、指導を受けたH子ちゃんは、
本当の夢を叶えて 良い家庭を築いているだろうか。
中学で転校したため、彼女のその後はわからないけれど、
H子ちゃん、私の夢は、今こうして
とっても小さく、叶っているよ。

あなたも実家に帰った時、
卒業アルバムを開いてみては?
当時のアルバム。 小生意気な小学生でした。。

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