HOME 連載と特集 連載記事 午後の散歩道 山田りか と申します
連載記事 午後の散歩道
山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.00

山田りか と申します

情報誌「ビタミンママ」の小さなコーナー
『ビタミン シアター』で、創刊号から
ママと子どもにまつわる小さなお話を連載している。
連載を始めて、15年。
15年といえば、その頃生まれた子どもが
もう高校生になっている。

当時、子育て真っ最中だった私の親友・Y子は
同じ立場で日々奮闘しているママ達に向け、
応援する雑誌を作りたいと立ち上がった。
その雑誌に、「何か書いてよ」と
電話をくれたのが、連載の最初の1歩だ。
Y子の娘も、今では はたちを過ぎた大学生。

いや~、トシ取るハズだわ。
…と、鏡のなかの自分の顔に くっきり刻まれた
「ほうれい線」を眺める私には
実は子どもがいない。

えっ?
いつもママ達を 面白おかしく いじってた
あの作者は、経産婦じゃなかったの!?と驚いている方、
イエイエ、
経産婦人じゃないどころか、結婚すらしてません。
私は正真正銘、戸籍真っ白けの
独身女である。

ああ、言ってしまった。
妊娠・出産から子育てまでの
ママ達が遭遇する様々な苦労や思いを
小さなお話につむいできた作者が
お気楽・能天気な「 行かず後家 」だったなんて…。

裏切られた気がする方がいるかもしれない。
気軽に語るな、と憤る方がいるかもしれない。
……言うんじゃなかった。
嘘をつくなら最後までつき通せ、と
誰かが言ってたような気がする。
誰だったかな、とググってみたら、
「佐村河内」
という名前が出てきて、慌てて閉じた。
髪型の数だけ、曲がり角がある 女の人生。

「何か書いてよ」とY子が電話をくれた頃、
私は作家として独り立ちするべく
もがきながら日々を過ごしていた。

勤めていた会社を辞め、
退職金とわずかな貯金を、食費と家賃に充てながら
文筆業で食べていく人生を目指し、
アパートの一室に閉じこもって
作品を書いていた。

書き上げた作品をコンクールに投稿したり
出版社の編集部に持ち込んだり。
会社を退社して3年頑張れば、
作家として何らかのスタートは切れるだろう。
そんな恐ろしく甘い考えで、
私は執筆の世界に飛び込んでいった。

退社して3年目に、
毎日新聞の「ちいさな童話」大賞で
選者賞という小さな賞をもらったが、
そこから芽が出ることはなく、
貯金だけは予定通り底をついた。
私は煮詰まった夢で自家中毒を起こし、
耳鳴りがして真っ直ぐに歩けなくなった。

「ああ、それ自律神経だよ」

児童文学作家の友達が、私の症状を聞いて
「ちょっとオモテに出たら?」
と、アルバイトを紹介してくれた。

古いお寺の住職のかたわら、
児童文学の評論家もしている人の元で、
私はひと月だけお世話になった。

「事務」と聞いて経理か何かだろうと
勝手に勘違いして訪ねたのだが、
じむというのは「寺務」のことで、
仕事は境内の掃除と 線香の販売だった。

勤務時間は朝10時から夕方の4時まで。
朝は広い境内を竹ぼうきで掃き、
駐車場に捨てられた吸殻を拾う。

お昼までに玄関やお堂に掃除機をかけ、
斎場で行われている どなたかの告別式の
出棺のクラクションを聞きながら、持参した弁当を食べる。
告別式が終わったら、次の通夜に備えて、斎場の掃除をする。
掃除の合間には、
墓参に訪れた檀家さんのために
電熱コンロで線香の束に火をつける。
花びらを掃くのは、人生の修業。

「ヒマな時は書いてもいいよ」と
優しい住職は言ってくれたが、
その頃は物を書く気力も湧かず、
与えられた仕事を 黙々とこなすのが精一杯だった。

働いたのは3月のひと月間で、
終わりの頃は、境内の中心にある
しだれ桜の大木から はらはら落ちる
ピンクの花びらを掃くのが大変だった。
竹ぼうきを置いたそばから
落ちてくる桜を眺めるうちに、
ぎゅっと詰まった夢の塊が
ゆるゆると ほどけるような気がしてきた。
働きながら書き続けたって 別にいいんじゃないかなぁ
と思えるようになってきた。

お寺のバイトを辞めてから、長い月日がたっているが
私はずっと働きながら、小さな創作を続けている。

異性を追いかけるよりも 夢を追いかけたため、
婚期をアッサリ見送ってしまったが、
どこかに物好きなイケメンがいるならば
いい恋がしてみたいものだ、と今も思っている。

ママにまつわるお話を書くにあたっては、
身の回りにいる たくさんの女友達が話してくれた
悲喜こもごもの出来事が、ヒントになっている。

落語家の世界では、上戸よりも下戸のほうが
酔っ払いの噺しは上手い、と言われている。
それにならって、子無し独身女の私も、
子育てママの悲喜こもごもを
可愛く楽しく書いていければ、と思っている。

創作の作品は、引き続き
雑誌『ビタミンママ』に掲載します。
このコーナーは次回から『午後の散歩道』と題し、
身の回りのさまざまな事について 書いていこうと思います。
のんびり気楽に、
お散歩する気分で おつき合い下さい☆

SHARE PAGE 友達にシェアする

BACKNUMBER バックナンバー

HOME 連載と特集 連載記事 午後の散歩道 山田りか と申します
TOP