國學院大學人間開発学部による「子育てエッセー」
教育が抱えるさまざまな問題と向き合いながら、子どもたちの健やかな成長を考えます。

2018年 No.12 子育てに武道の視点を

國學院大學 人間開発学部 健康体育学科
教授 山田 佳弘(やまだ よしひろ)

弓道錬士六段
健康科学アドバイザー(日本体力医学会)
國學院大學弓道部監督(1998-2015)

夏冬のオリンピック後、日本人選手の活躍した種目に多くの親子が注目し、スポーツ教室への見学者も急増しているようですね。同様に武道教室にも子どもが集まっています。入会目的は「体づくり」に始まり、「礼儀作法」、「倫理観、協調性の育成」などでしょう。柔道・剣道を代表とした多くの武道は、子どもへの指導実績において他のスポーツよりも長い歴史があります。そこで今回は、子育てに役立つ武道の視点を三つ紹介します。

一つ目は、「礼儀・マナーを身に付ける」です。多くの武道は対峙する相手の体を借りて技の学習を進めます。少なからず相手の体に痛みなどの負担を強いるので、相手を慈しむ心を持つように指導されます。その気持ちを表す態度が「お願いします、ありがとうございました」です。しかしこれらは急には身に付きません。武道教室と共に家庭内での親子による実践も重要となります。優しい子どもを育てましょう。

二つ目は、「我慢を覚えさせる」です。武道は結果よりもその練習過程を重要視するため、基本が身に付いていない者は応用技術を教わることが認められません。基礎が完成するまで我慢して練習を続けます。ここで忍耐力を育てます。そしてこれを育むチャンスは家庭にもあります。それは子どもに大人と同じ権利や物品を与え過ぎる環境を作らないことです。
子どもが大人と対等では我慢を覚えさせる機会を失ってしまいます。ひと昔前は「ここからは大人の時間だから寝なさい」「これは大人だけのデザート」などというように、親子でも大人と子どもの線引きを示す会話がありました。近年、「友達兄妹のような親子」ということが言われますが、意味を間違うとケジメがつかなくなり、子どもは我慢を覚えなくなります。

三つ目は、「危険だからこそ学ぶ意味がある」です。遊びも含めて運動やスポーツには怪我がつきものです。武道も道具などを使い身体接触を伴う種目が多く、一歩間違えれば自身だけではなく仲間をも危険にさらすことになります。
しかし、これらを危険だからといって避けていいのでしょうか。子どもたちには何が危険で、どんな場合に怪我をするのか考える力を身に付けさせなければなりません。危険性を伴う本物の体験の中に危険回避能力と仲間を守る思いやりの意識が芽生えると思います。親としてはハラハラしますが、危険から遠ざけ過ぎると、かえって子どもを危険にさらすことになるのかもしれません。

これらをまとめると、親自身がケジメと勇気をもって生活する習慣を持つことです。子は親の背中を見てますよね。

最新情報をチェックしよう!