豊富な経験を活かし、患者さんも介護に携わる方々も、しっかりサポート

先生と話す患者さんからは笑みが絶えません。「先生と話すと元気になる」という声も多いそうです(港北ニュータウン診療所:都筑区茅ヶ崎中央)

「外来」「入院」に次ぐ第3の医療として注目を浴びている「在宅医療」。港北ニュータウン診療所は、2007年に「在宅療養支援診療所」として開院して以来、365日24時間体制で、ご自宅や介護施設で療養生活をおくる患者さんを支えている。「生活が見えるご自宅こそ最高の診察室」をモットーに、幅広い疾患に対応し、患者さん本人はもちろん、ご家族や介護をする方もしっかりフォロー。豊富な経験を生かし、安心と元気を届ける診療所です。

患者さんの生活の質を向上させたい

―――「在宅医療」とは具体的にどのようなものでしょうか。

在宅医療とは、医師がご自宅や介護施設などに定期的に赴いて行う医療のことです。対象者は、年齢や疾患、介護度などに関わらず『ひとりで通院できない方』となります。このような方が抱える問題は数多く、高齢で足腰が悪い、認知症がある、車椅子を利用している、病気や怪我の後遺症がある、在宅酸素を利用しているなど様々です。このほか、病院ではなく住み慣れたご自宅での終末期医療を望む方や、ご家族に見守られながらのお看取りを望む方にも、在宅医療を提供する事ができます。

訪問は、ひと月に2回が基本となりますが、疾患や状態により増減し、当院では医師のほか、看護師もしくは診療助手と共にお伺いし、診療を行っています。
診療内容は外来診療と変わりませんが、レントゲンなどの画像診断はできません。また、より高度な検査や治療が必要と判断した場合は、病院への受診をお願いすることもあります。地域の診療所との大きな違いは、医師へ24時間連絡できる点です。熱が出た、転倒したなど、状態に変化があった場合はすぐに相談できますので、患者さん本人はもちろん、ご家族や介護に携わる方々にもご安心いただけます。在宅での療養生活は、患者さんが望んでもひとりでは難しい事が多いため、周囲の方と連携してサポートしていくことが大切です。在宅医療では、地域の医療介護者と連携しながら必要な支援を行って参ります。

―――在宅医療が果たす役割についてお聞かせください。

在宅医療の大きな役割のひとつとして、ご自宅での「お看取り」が挙げられます。2014年の調査では、約50%の方が自宅で人生の最期を迎えたと回答されましたが、実際には、病院で亡くなる方がおよそ8割、ご自宅で亡くなる方は約1割とまだ少ないのが現状です。今後は、在宅医療の発展、お看取りに対する考え方の変化に伴い、ご自宅での割合が急速に増加していくと考えられています。
自宅でのお看取りを行う在宅医の役割は、死を迎える方の精神的・身体的な苦痛を緩和すると同時に、ご家族の意識や環境を整えることで、安らかな最期を過ごせるようにお手伝いをすることです。終末期を迎えた方を、周囲が受け入れているか確認しながら、誇りと責任を持って「お看取り」という役割に進んで参ります。

1日に何件も訪問診療を行う院長先生にとって電子カルテは強い味方。これまでの経過を確認し、今後の治療方針を提案します(港北ニュータウン診療所:神奈川県横浜市都筑区)

―――特に力を入れている取り組みなどはございますか?

ひとつは患者さんに対するアプローチに関してです。私はリハビリテーション科医でもありますので、患者さんの生活の質、QOL(Quality Of Life)を向上させることに力を入れています。加齢による身体能力の低下や、病気の後遺症などにより活動範囲が狭くなると、自宅に籠りがちになってしまいます。これを予防するためには、病気の治療だけではなく、生活に関わる部分へのアプローチも必要となります。福祉用具の利用や住宅改修などの提案はもちろん、ベッドの位置やトイレまでの移動手段の確認など、その人に合った生活環境が構築できるよう医学的見地から助言を行い、生活の質の向上を目指します。
もうひとつは、地域連携ネットワークの構築です。患者さんを支援するには、在宅医だけではなく、医療介護者と連携してサポートしていくことが非常に重要になってきます。地域の医療介護者のレベルアップと連携強化を目的に、地域の医療従事者や介護従事者を対象とした勉強会も開催しています。知識や技術の向上を図るとともに、連携が、よりスムーズに行えるよう努めております。

―――在宅医療から外来診療という流れも実現されたとお聞きしました。

在宅医療を提供している患者さんが、ひとりで通院ができるまで回復した場合、引き続き当院にて外来診療を行う事が可能となりました。在宅医療を担当していた医師が、そのまま診療に当たることもできますので、継続した診療が行えるメリットがあります。
実はこの外来通院も、患者さんにとっては大切なリハビリの一環と考えております。ちょっとした段差を上ることや、慣れていない場所で注意しながら歩行することは、自らの判断のもと身体を動かすことになりますので、心身ともに良い刺激となり、QOLを向上させることにつながります。

患者さんの生活に寄り添うことが在宅医療のやりがい

―――在宅医を志した理由をお聞かせください。

医師となり、自分の進む診療科を選ぶとき、仲の良い同級生から「リハビリテーション科も見学しよう」とのお誘いがありました。何気なくついて行ったのですが、話を聞いてみると理想と一致。「ここに進むしかない!」と、すぐに入局を決めました。
リハビリテーション科が他の科と異なる点は、病気だけでなく障害もみるということです。つまり、病気を治すだけではなく、患者さんが満足した日常生活をおくれるよう医学的な立場から支援をします。設備の整った病院の環境ではうまく歩けても、自宅で同じとは限りません。なぜなら、どこでも手すりがある訳ではないですし、廊下に段差があることもあれば、床に物が置いてあることもあります。病院で上手にできても、ご自宅でうまくいかなければ意味がありません。そう考えると、患者さんをお待ちするしかない外来診療が歯がゆくなってしまいました。
ご自宅に伺うことで、病院の診療室では見えなかった患者さんの一面に気がつくこともありますし、一生懸命にリハビリを頑張って、目標を達成したときの喜びを一緒に味わうこともできます。
そんな患者さんのご自宅こそが最高の診察室であり、そこで診療できるのが在宅医療という制度でした。

訪問診療では患者さんだけでなく、ご家族と一緒に診ることを大切にしています(港北ニュータウン診療所:都筑区茅ヶ崎中央)

―――やりがいを感じるのはどのような時でしょうか。

定期的に患者さんの元へ訪問することで、病状が少しずつ改善するのが目に見えて分かることです。「言葉が出るようになった」「歩行器で歩けるようになった」など、ご家族や介護に携わる方々と共に喜びを味わえるのが、大きなやりがいにつながっています。

この仕事の醍醐味を多くの人に味わってもらいたい

―――医師を志す若い世代にメッセージをお願いいたします。

医師になるということは少しハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、その分医師になった時の達成感はとても大きいですし、何より、医師として様々な患者さんと接することで、自分自身もずっと成長し続けることができる職業です。

経済的な心配をする人もいるかもしれませんが、医学生向けの奨学金も数多く用意されていますので、やる気と強い信念を持って努力をすれば、十分に医師を目指すことができると思います。

若い在宅医がどんどん増えてほしいと思っています。「超高齢化社会」となった日本では、在宅医療の重要性はこれからもどんどん高まっていきますからね。興味のある方は是非医師を目指してもらい、この仕事の醍醐味を多くの医師に味わってもらいたいです!

院長 神山 一行 先生(港北ニュータウン診療所:神奈川県横浜市都筑区)

東海大学医学部卒業。昭和大学リハビリテーション科、三宿病院神経内科、東京共済病院整形外科、昭和大学横浜市北部病院リハビリテーション科勤務を経て、2007年港北ニュータウン診療所開院。日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医。

先生と話す患者さんからは笑みが絶えません。「先生と話すと元気になる」という声も多いそうです(港北ニュータウン診療所:都筑区茅ヶ崎中央)
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